藤波朱理はなぜ負けた?タックル封じと階級転向、北朝鮮選手との対戦を考察
「藤波朱理が0―10で負けた」と聞いて、驚いた人も多いのではないでしょうか。
2024年パリ五輪の女子53キロ級で金メダルを獲得し、中学時代から勝ち続けてきた藤波選手。
その連勝が、2026年10月3日の愛知・名古屋アジア大会で止まりました。
今回の敗戦は、得意のタックルを封じられ、相手の作戦を突破できなかったことが大きな理由と考えられます。
さらに、57キロ級へ階級を変えて臨んだことも、今回の試合を考えるうえで外せません。
一方、「北朝鮮選手の情報が少なかったから負けた」という見方は、確認できた事実と分ける必要があります。
藤波朱理の155連勝を止めたのは誰?
相手は、北朝鮮のソン・イルシム選手です。
日刊スポーツによると、25歳で、2025年世界選手権57キロ級の銀メダリスト。
その世界選手権決勝では、五輪金メダリストのヘレン・マルーリス選手を2―1でリードし、残り5秒で逆転されて2―3で敗れています。
日本の読者にはなじみが薄くても、世界の頂点に迫る実力者だったわけです。
藤波選手は準決勝で0―10の敗戦。
2017年9月から続いていた連勝は155で止まり、約9年ぶりの黒星となりました。
最大の敗因は、得意のタックルを封じられたこと
藤波選手の強みは、距離を生かした速いタックルです。
しかし、今回は相手が接近し、手首などを押さえて、攻めに入るための間合いを取らせませんでした。
父の俊一コーチも、こうした作戦は予想していたものの、対応する課題を克服できなかったと説明しています。
「何をされるか」は分かっていても、「されたときにどう崩すか」が試合でうまくいかなかった。
ここが、今回の敗戦を読み解く大きなポイントです。
同日の本人コメントを伝えた報道では、組まれて不利な体勢になる時間が続き、タックルを狙っても逆に背中側へ回られたとされています。
この攻防からは、単に攻めが少なかったというより、自分が攻めやすい形を作れないまま動き、相手に切り返されたと考えられます。
53キロ級から57キロ級へ。階級変更も影響した?
階級を変えて臨んだことも、敗戦の背景として考える必要があります。
藤波選手はパリ五輪後、53キロ級から57キロ級へ転向しました。
今回が転向後初のシニア国際大会でした。
「たった4キロ」と感じるかもしれませんが、階級が変われば、対戦する顔ぶれも変わります。
53キロ級で磨いた勝ち方を、57キロ級の強い相手にも通用させる。その対応力が試された大会だったと考えられます。
ただし、相手との筋力や体格の差を詳しく確かめられていないため、「階級を上げたせいで力負けした」とは断定できません。
ただ階級の体になっていなかったという意見もありました。
日本代表総監督として今大会に参加した栄和人氏(66)は「藤波はこの階級(57㌔級)に体がフィットしていないように見えた」と言っていました。
今回、具体的に確認できた課題は、距離を詰めてくる相手への対応です。
俊一コーチは、1回戦や準々決勝の相手も接近してきたと説明しています。
準決勝で突然出た問題というより、同じ課題が世界トップ級の相手との対戦で、よりはっきり表れたと見ることができます。
北朝鮮選手の情報の少なさは敗因だった?
「相手を十分に研究できなかったのでは?」という疑問も浮かびます。
一般に、相手の試合映像や対戦経験が限られていれば、組み合ったときの強さや細かな動きをつかむのは難しくなります。
その意味で、情報量や対戦経験の差が影響する可能性は、考察の一つとして挙げられます。
ただ、藤波陣営がソン選手の映像や情報を、どれほど持っていたかは確認できません。
ソン選手には前年の世界選手権で銀メダルを獲得した実績があり、俊一コーチも接近してタックルを封じる作戦を予想していました。
そのため、「北朝鮮の選手だから情報がなく、対策できなかった」と書くのは言いすぎです。
現時点では、情報不足を主な敗因にするより、予想した作戦への対応が試合で機能しなかったことを重く見るほうが、報道に沿った考察といえます。
1敗で「藤波朱理は弱くなった」とはいえない
0―10という結果は、藤波選手にとって厳しいものです。
しかし、この1試合だけで、衰えや実力の低下を判断することはできません。
藤波選手はその後の3位決定戦でベトナムのグエン選手にフォール勝ちし、銅メダルを獲得しました。
連勝は止まりましたが、大会の最後を勝利で終えています。
ちゃんと最低限の銅メダルは獲得しています。
まとめ
今回の敗戦は、ソン選手の実力とタックルを封じる作戦、それを突破できなかった藤波選手の課題が重なった結果と考えられます。
57キロ級への転向後、初のシニア国際大会だったことも、背景として見ておきたい点です。
一方、相手の情報不足や、階級変更による力の差が直接の敗因だったかは確認できません。
155連勝が止まったことは大きなニュースですが、今後注目したいのは、得意のタックルを封じられたときに、どんな攻めを見せるか。
今回見えた課題を乗り越えられるかが、次の勝負につながりそうです。