ナフサ不足はいつまで続く?高市首相が示した2027年までの見通し
今後、スーパーの棚に並ぶポテトチップス、白黒のパッケージのニュースを見て「あれ?」と思いませんでしたか。
実はこれ、ナフサ不足が原因なんです。
ナフサとは原油から取り出される石油化学製品の基礎原料で、プラスチックや包装材、医療用品まで私たちの暮らしを支えるあらゆるものに使われています。
中東情勢の悪化でその供給が不安定化し、日本の生活にも影響が広がり始めています。
高市首相は「2027年まで供給継続可能」との見通しを示していますが、現場では流通の目詰まりが続き、政府説明との乖離も指摘されています。
ナフサ不足の原因から政府の対応、私たちの生活への影響まで、わかりやすく解説します。
目次
ナフサ不足が起きた理由、知ってる?
2026年に入ってから、じわじわと私たちの生活に影響が出始めている「ナフサ不足」。
ニュースで耳にしたことがある方も多いと思いますが、「そもそもナフサって何?」という方も少なくないのではないでしょうか。
まずは基本から押さえておきましょう。
ナフサとは、原油を精製する過程で取り出される「粗製ガソリン」のこと。
ガソリンスタンドで入れるガソリンとは別物で、石油化学製品の原料として使われます。
プラスチック、塗料、インク、包装材、医療用品、建設資材etc.
私たちの暮らしのあらゆる場面に関わる製品の「出発点」がナフサです。
言ってみれば、ナフサは現代の生活を支える「縁の下の力持ち」。目には見えないけれど、なければ困る存在なんです。
では、なぜ今、ナフサが不足しているのでしょうか?
原因はズバリ、中東情勢の悪化です。
日本が輸入する原油の大部分は中東に依存しています。
その中東で、イランをめぐる緊張が高まり、ホルムズ海峡の通航リスクが上昇。
ホルムズ海峡とは、ペルシャ湾と外洋をつなぐ幅約50kmの細い海峡で、中東産の原油タンカーの多くがここを通過します。

この「世界の石油の咽喉元」とも言える場所が不安定化したことで、日本への原油・ナフサの供給にも影響が出始めました。
日本はエネルギーの海外依存度が極めて高い国です。
原油に至っては、そのほとんどを輸入に頼っています。
中東情勢が揺れると、日本の暮らしに直結する。
これは決して他人事ではありません。
「でも、備蓄があるんじゃないの?」
そう思った方、鋭いです。
日本には国家備蓄と民間備蓄を合わせた石油備蓄の仕組みがあります。
ただ、備蓄はあくまで「一時的な緩衝材」といったところ。
長期化する供給不安を備蓄だけで乗り越えるのは難しく、代替調達の拡大が急務となっています。
さらに問題を複雑にしているのが「流通の目詰まり」です。
原油やナフサ自体は一定量確保できていても、それが製品になって消費者や企業の手元に届くまでの流通ルートで滞りが生じている。
川上(製造側)と川下(消費側)の間でうまく物が動かない状態が続いているのです。
身近な例で言えば、カルビーのポテトチップスのパッケージが白黒になったことをご存じでしょうか。
これはナフサ由来のインクや溶剤の調達が難しくなったためで、5月下旬から対象14品に適用されています。
カゴメのケチャップも同様にパッケージを簡素化。
私たちが普段スーパーで手に取る商品にも、すでに変化が現れ始めているのです。
企業へのアンケートでは、約44%がすでに何らかの影響を受けていると回答しています。
価格転嫁、供給制限、内容量の変更――見えないところで、着実に影響の輪が広がっています。
高市首相が示した「2027年まで大丈夫」の根拠
「日本全体として必要な量は確保できています」
2026年の党首討論や閣僚会議で、高市早苗首相が繰り返し口にしてきた言葉です。
ナフサ不足をめぐる国民の不安が高まる中、政府はどのような根拠でこの発言をしているのか。
そして「2027年まで大丈夫」という見通しは、どこから来ているのでしょうか。
順を追って整理していきましょう。
まず、政府が打った手は大きく3つです。
ひとつ目は、備蓄原油の国内精製。
日本には国家備蓄と民間備蓄を合わせた石油備蓄の仕組みがあります。
通常は「いざというとき」のために温存されるこの備蓄を、今回は積極的に国内精製に回すことで、ナフサの国内供給を下支えしています。
ふたつ目は、中東以外からの代替輸入の拡大。
これが今回の対応の核心とも言えます。
これまで中東に集中していた調達先を、アメリカ、アルジェリア、ペルーなど複数の国・地域に分散。
5月には中東以外からの輸入量が3倍規模に拡大する見込みとされており、調達先の多様化が着実に進んでいます。
みっつ目は、流通の目詰まり解消への直接介入。
関係閣僚会議を通じて流通改善を指示し、重要物資安定確保担当相も新たに任命。
政府の出先機関を活用した小規模事業者への聞き取り強化や、業界への過剰発注抑制の要請なども行っています。
補正予算の検討も俎上(そじょう)に上がっており、財政面からの支援も視野に入っています。
「2027年まで」という見通しはどう導き出されたのか。
当初、政府が示していた供給継続の見通しは「半年以上」でした。
それが4月30日ごろを境に、「年を越えて、2027年まで継続可能」へと上方修正されています。
この修正の背景にあるのが、代替輸入の拡大ペースが想定以上に順調だったことです。
中東以外のルートから安定的に原油・ナフサを調達できる目処が立ったことで、政府の見通しに余裕が生まれた形です。
とはいえ、これはあくまで「全体量」の話。
流通の現場まで届くかどうかは、また別の話です。
ここが、政府の説明と現場の実感のあいだにある「ズレ」の正体でもあります。
「量は足りている」のに、なぜ現場は苦しいのか。
専門家や野党からは「説明と実態の乖離がある」「危機感が不足している」との指摘が相次いでいます。
原油やナフサは確保できていても、それが石油化学メーカーに届き、加工されて、食品メーカーや建設業者、医療機関の手元に届くまでには、長い流通の連鎖があります。
その途中で「在庫を多めに積んでおこう」という心理が連鎖すると、川下の事業者には物が届かなくなる。
いわゆる「需給の歪み」が生じるのです。
これはコロナ禍のマスク不足に似た構造とも言えます。
「マスク自体は工場で作られているのに店頭から消えた」あの現象を覚えているでしょうか。
ナフサの流通問題も、構造的にはそれに近いものがあります。
高市首相は「流通の目詰まり解消」を最重要課題と位置づけ、現場へのプッシュ型支援を強化しています。
2027年までという見通しは政府として示せました。
では、私たちの生活への影響はこれからどこまで広がるのでしょうか?
生活への影響はどこまで広がるのか
「ナフサ不足」と聞いても、最初はどこか遠い話のように感じた方も多いはずです。
しかし、カルビーのポテトチップスのパッケージが白黒になり、ケチャップのボトルデザインが簡素化されるというニュースが出ました。
こうした変化が実際にスーパーの棚に並び始めるとき、「これは本当に自分たちの話だ」と実感する方も少なくないのではないでしょう。
では、影響はこれからどこまで広がるのか。
現時点でわかっていることを整理します。
すでに影響が出ている分野はどこか?
ナフサは石油化学製品の基礎原料ですから、その影響は非常に幅広い分野に及びます。
現時点で影響が確認されている主な分野を見てみましょう。
まず食品包装。
ビニール袋、ラップ、ペットボトル、印刷インクなど、食品に関わるほぼすべての包装材にナフサ由来の素材が使われています。
カルビーやカゴメの事例はその象徴です。
一部では販売休止に踏み切るケースも出ています。
次に建設・塗装分野。
塗料やシンナーの主原料もナフサです。
住宅の外壁塗装や建設現場で使う塗料の調達が難しくなれば、工期への影響も避けられません。
さらに医療・衛生用品。
注射器、点滴バッグ、医療用チューブなど、病院で使われるプラスチック製品の多くもナフサ由来です。
「医療への影響は万全」と政府は強調していますが、現場の医療機関からは調達コストの上昇を懸念する声も聞こえてきます。
業界的に価格転化しにくいところですので、長期化するとコストが経営を圧迫するでしょう。
そして潤滑油・工業用品。
機械を動かすための潤滑油にもナフサ系の成分が含まれており、製造業全般への波及も懸念されています。
自動車のエンジンオイルも今後不足すると言われています。
企業アンケートでは約44%がすでに影響を受けていると回答しており、価格転嫁・供給制限・内容量変更などの対応が静かに、しかし着実に広がっています。
これから先、どうなるのか?
正直なところ、先行きは中東情勢次第という面が大きいです。
ホルムズ海峡の緊張が和らげば、供給不安も落ち着く方向に向かうでしょう。
しかし長期化すれば、代替調達のコスト増が物価に転嫁され、私たちが日常的に買う食品や日用品の値段に影響が出てくる可能性もあります。
政府は「全体的な供給崩壊には至っていない」と説明しており、現時点でそれは事実です。
ただ、小規模事業者を中心に「現場には届いていない」という切実な声が続いていることも、また事実。
このギャップが縮まらなければ、政権支持率への影響も避けられないとみられています。
私たちにできることはあるか。
大きなことは難しくても、できることはあります。
ひとつは過剰な買いだめをしないこと。
流通の目詰まりの一因は、不安心理による在庫の積み増しです。
必要な分だけ購入する行動が、流通の正常化につながります。
もうひとつは情報を正しく取ること。
SNSには「もうすぐ物が買えなくなる」といった過剰な情報も流れています。
政府や信頼できるメディアの情報を冷静に確認する習慣が、今こそ大切です。
ナフサ不足は、私たちの生活と世界の情勢がつながっていることを改めて気づかせてくれる出来事でもあります。
遠い中東の海峡の緊張が、スーパーの棚の商品に影響する時代。
そんな時代に私たちは生きています。
引き続き、最新情報をチェックしながら落ち着いて対応していきましょう。
まとめ
ナフサ不足の原因は中東情勢の悪化によるもので、ホルムズ海峡のリスク上昇が日本の供給網に波及しています。
高市首相は代替輸入の拡大や備蓄原油の精製などで対応を進め、供給は「2027年まで継続可能」との見通しを示しました。
ただ、全体量は確保できていても「流通の目詰まり」が解消されていないため、現場への影響は続いています。
食品包装・建設・医療など幅広い分野に波及しており、企業の約44%がすでに何らかの影響を受けている状況です。
先行きは中東情勢次第ですが、過剰な買いだめを避け、正確な情報をもとに冷静に行動することが、今の私たちにできる最善策と言えるでしょう。