ミラノ・コルティナ五輪につながるのレース映像を見て、
「あれ?」と感じた人も、きっと少なくなかったはずです。

スタート直後から、吉田雪乃選手が前にいる

それは、これまで抱いてきた印象とは明らかに違う光景でした。

画面越しでも分かるほどの、はっきりした変化。

正直、少し驚いた人もいたのではないでしょうか。

女子500mで勝敗を分けるのは、ほんの一瞬の出だしです。

 

コンマ数秒の世界

 

そこで前に出られるかどうかが、レース全体を左右します。

では、なぜ今季の吉田雪乃は、スタートがここまで評価される存在になったのか。

その裏には、世界レベルの経験を持つコーチ・及川佑の存在と、
表にはなかなか見えてこない準備の積み重ねがありました。

それは単なるフォーム改善の話ではありません。

考え方が変わり、競技との向き合い方が変わり、
支えてくれる人との関係性まで含めて、少しずつ積み上げてきた変化。

スタートが変わった理由を知ったとき、これまで何気なく見ていたレースが、まったく違って見えてくる。

そんな感覚を覚えるはずです。




吉田雪乃のスタートが劇的に向上した理由とは

「スタートで勝負が決まる」と言われるスピードスケート500m。

ほんの一瞬の出遅れが、そのまま順位に直結します。

そう言われても大げさではない、シビアな種目ですよね。

 

ミラノ・コルティナ五輪の舞台で、吉田雪乃選手のスタートが「今季から劇的に向上した」「別格レベルになった」と評価されているのには、はっきりした理由があります。

これまでの吉田選手は、滑りの安定感や後半の粘りに強みを持つ一方で、スタートが課題だと見られてきました。

一歩目でわずかに遅れ、その差を追いかける展開になる場面も多かった。

序盤で流れをつかめず、思うようなレース運びができないこともあったのです。

実力はあるのに、スタートで損をしてしまう。

そんな印象を抱いていたファンも、多かったのではないでしょうか。

ところが今季、その見方が大きく変わりました。

号砲と同時に鋭く飛び出し、最初の100mで全体トップに立つレースが増えています。

 

全日本選手権などでは、トップ選手を抑えて最初の100mを最速で通過する場面もありました。

「追う側」から「流れを作る側」へ。

立ち位置そのものが、はっきりと変わった瞬間です。

スタートで前に出られると、レース全体に余裕が生まれます。

無理に踏み込む必要がなくなり、自分のリズムで自然に加速できる。

その結果、後半までスピードを保ったまま滑り切れるようになりました。

この変化は、タイムだけに表れているわけではありません。

滑りの安定感にも、はっきりと現れています。

 

特に評価されているのが、スタート直後の「安定感」。

力任せではなく、重心を低く保ち、氷を確実に捉える構え。

一歩一歩がブレず、加速が途中で途切れない。

派手さはないのに、完成度の高さだけが際立つスタートです。

 

本人も密着映像の中で、「今年から本当にスタートが変わった」と語っています。

感覚としても変化を実感し、それがそのまま結果につながっている状態。

偶然の好調ではなく、積み上げてきた成果だと感じさせます。

では、このスタート改善を支えたものは何だったのでしょうか。

その答えは、スタートを知り尽くしたコーチの存在にありました。




世界最速男・及川佑の指導内容全貌

吉田雪乃のスタート改革を語るうえで、欠かすことのできない存在が、及川佑コーチです。

元スピードスケート日本代表。

男子500mを主戦場としてきた、生粋のスプリンター。

トリノ五輪4位、五輪3大会連続出場という実績を持ち、現役時代は「世界最速のスタートダッシュを持つ男」と評された人物でした。

スタートに関しては、まさに世界レベルを極めてきた存在。

その言葉と動きには、裏付けしかありません。

 

及川コーチの指導が注目される理由は、経験を押し付けない点にあります。

「俺はこうだった」では終わらせない。

誰でも再現できる形にまで、徹底的に落とし込む姿勢。

速く出るために必要な要素を、感覚ではなく、言葉と動きで分解していきます。

 

構え。

重心。

刃の当て方。

力の伝え方。

一つひとつを確認し、曖昧な部分を残さない。

その積み重ねが、スタートの再現性を高めていきました。

特に重視されたのが、スタート前の構えです。

 

腰の位置は高すぎないか。

上体が前に突っ込みすぎていないか。

ほんのわずかなズレが、一歩目の遅れにつながる世界。

及川コーチは、「無理に速く出ようとしなくていい。正しい形なら、自然に前へ進む」と伝え、基礎から見直しました。

次に意識されたのが、氷への“たたき込み”。

力任せに踏むのではなく、刃を確実に氷に当て、前へ力を伝える。

横に流れず、加速につながる一歩を作ること。

これは、現役時代の及川コーチ自身が最大の武器としていた部分でもあります。

 

スタート練習では、回数よりもを重視。

何本も滑るのではなく、一本ごとに映像を確認し、その場で修正します。

「今の一歩は、何が良かったのか」「なぜ、少し流れたのか」。

原因をはっきりさせ、次の一本にすぐ反映させる。

この地道な積み重ねが、ブレのないスタートを作っていきました。

象徴的だったのが、五輪前の最終調整です。

八戸での合宿中、及川コーチ自身が500mを吉田選手と一緒に滑走。

 

38秒45でまとめる姿を見せ、理想のスタートと加速を体感させました。

言葉だけではなく、「こう滑る」という答えを示せる。

トップで戦ってきた指導者だからこその強みです。

 

及川コーチは吉田選手について、「想像を上回る成長を見せてくれる」と語り、集中力の高さにも触れています。

一度伝えたポイントを、すぐに修正できる。

そして、次の滑りで形にしてくる。

その吸収力があったからこそ、スタートという繊細な技術が、短期間で完成に近づきました。

世界レベルのスタートを知るコーチと、それを素直に吸収する選手。

この相性の良さこそが、吉田雪乃選手のスタートを、確かな武器へと押し上げた最大の理由です。




吉田雪乃が変わったスタート改革の裏側

吉田雪乃のスタートが大きく変わった背景には、技術面だけでは説明しきれない、環境と心の変化がありました。

速くなった理由は何か。

実はその裏側に、結果を左右する重要な要素が詰まっています。

まず大きかったのが、及川佑コーチとの関係性の深まりです。

2023年から指導を受けてきた吉田選手ですが、今季からは、及川氏に本格的に師事する体制へと移行しました。

本人も、「今季からは実質的にメインコーチだと感じている」と語っています。

 

この変化が、スタート改革を進めるうえで想像以上に大きな意味を持ちました。

疑問に思ったことを、その場で確認できる。

うまくいかなかった点を、遠慮なく共有できる。

そんな信頼関係があるからこそ、細かな修正にも迷いが生まれません。

スタート前に考え込む時間が減り、やるべきことが、どんどんシンプルになる。

その結果、集中力が高まり、号砲だけに意識を向けられる状態が整っていきました。

スタートの改善は、精神面にもはっきりと影響しています。

 

本人もレース後の取材で、「自信につながっている」「ひと安心できた」と語っています。

スタートへの手応えが、気持ちの安定につながっている様子が伝わってきます。

不安が軽減されることで、号砲への反応がより自然になる。

体の動きもスムーズになり、技術とメンタルが噛み合い始めた感覚。

偶然ではなく、必然の変化だと言っていいでしょう。

そして、吉田選手の競技人生を語るうえで欠かせないのが、恩師・植津悦典さんの存在です。

 

中学時代から指導を受け、盛岡工業高校への進学を後押しした人物。

吉田選手が「恩師」と呼び、競技を続ける理由の一つに「恩返し」を挙げている存在でもあります。

勝ちたい理由が、自分のためだけではない。

支えてくれた人たちの顔が浮かぶ。

その思いが、地道な練習や細かな修正を積み重ねる原動力になってきました。

スタート改革も、その延長線上にあります。

 

さらに、及川コーチと恩師という、異なる立場の指導者がいることもプラスに働きました。

技術を突き詰める存在。

原点を思い出させてくれる存在。

その両方がそろっているからこそ、心と体のバランスが崩れにくい。

競技に集中できる土台が、静かに、でも確実に整っていきました。

ミラノ・コルティナ五輪で、吉田雪乃選手は女子500mと1000mに出場しています。

 

スタートで流れをつかめば、メダル争いに加われる位置にいるのは確かです。

もはや、「スタートが課題の選手」ではありません。

「スタートで勝負できる選手」へ。

確実に、その段階へと進みました。

一歩目が変われば、レースの景色が変わる。

その事実を、吉田雪乃選手は今も氷上で、証明し続けています。




まとめ

吉田雪乃選手のスタートに起きた変化は、
単なる技術向上という言葉だけでは、どうしても語りきれません。

そこには、経験豊富なコーチの視点があり、何度も積み重ねてきた細かな調整があります。

そして何より、競技そのものに向き合う姿勢の変化が重なっています。

一歩目が安定すると、レース全体の流れが変わる。

流れが変われば、結果へたどり着く可能性も、自然と広がっていきます。

 

今季の滑りは、その連鎖が机上の理論ではなく、
確かな形として結実していることを、はっきり示しています。

スタートに注目してレースを見てみると、
これまでとは、見えてくる景色が違うはずです。

号砲の一瞬。

氷を捉える最初の一歩。

その短い時間の中に、積み重ねてきた時間と、選び続けてきた判断の答えが詰まっている。

吉田雪乃選手の氷上の一瞬は、それを物語る静かな証明になっています。

ABOUT ME
to-chan
元介護施設職員、現ブロガー、雨を愛する人 自動車好き、読書、光輝くもの好き 座右の銘:朱に交われば赤くなる 好きな四字熟語:一期一会