北川進の経歴が異次元な理由とは
科学の世界でノーベル賞を受賞するような人物は、特別な才能を持つと思うかもしれません。
しかし、北川進氏の人生をたどると、その原点にあったのは「好奇心」と「努力」。
決して遠い世界の人ではなく、自分の興味を追求し続けた一人の研究者でした。
遊びから始まった研究者としての原点
1951年、京都府京都市下京区に生まれた北川氏。
幼少期は、四条河原町のにぎやかな街で育ち、鴨川沿いで活発に遊んでいたそうです。
家では時計やラジオを分解することが大好きで、身の回りの“構造”への関心が芽生えたのもこの頃。
まさに「遊び」が原点だったのです。
京都大学で磨かれた探究心
彼が進学したのは、地元の京都市立開建高等学校（現・塔南高等学校）。
さらにその後、難関の京都大学工学部石油化学科に合格し、1974年に卒業。
続いて同大学院の博士課程に進み、1979年に工学博士の学位を取得します。
ここまでは、いわゆる優秀な理系学生の正統派ルートといえるでしょう。
異次元の出発点、MOF研究の始まり
しかし、北川氏の“異次元ぶり”はここから始まります。
専門は「無機化学」ですが、その中でも「多孔性配位高分子（PCP）」や「金属有機構造体（MOF）」と呼ばれる材料の研究に没頭。
1997年にはMOFに関する重要な論文を発表します。
当時としてはまったく新しい発想。まさに異次元の挑戦でした。
理解されなかった挑戦の日々
ところが、その研究は当初、世界中の研究者からすぐに受け入れられたわけではありません。
発表当初、国際会議では懐疑的な反応を受けたと語られています。
「空調のない暑い会場で、涙か汗かわからないほどの苦労だった」と当時を振り返る北川氏。
周囲の評価が得られない中でも、自らの仮説とデータを信じ、コツコツと実証を積み上げていったのです。
世界を変えたMOFの可能性
やがてMOFは、二酸化炭素の吸着や水素貯蔵といった、脱炭素社会の鍵を握る素材として注目されるようになります。
そして2025年、その功績が評価され、ついにノーベル化学賞の受賞へとつながりました。
研究者としての情熱と信念。その結晶ともいえる瞬間でした。
「異次元の経歴」とは何を意味するのか
異次元の経歴とは、ただ特別な才能があるという意味ではありません。
誰にも見向きされなかった研究に粘り強く取り組み、20年以上をかけて世界を驚かせた。
その信念と持続力こそが、北川進氏の「異次元」たるゆえんなのです。
そしてそれは、私たち一人ひとりにも通じる姿勢ではないでしょうか。
京都大学副学長までの道のり
「京都大学の副学長」――この肩書きを聞くだけで、ものすごいキャリアの持ち主を想像してしまいますよね。
でも、北川進氏の軌跡を見てみると、派手さよりも「積み重ね」の連続だったことがよくわかります。
研究と教育を両立した初期キャリア
大学院で工学博士の学位を取得した後、北川氏は近畿大学理工学部で助手・助教授として研究と教育に従事しました。
最先端の研究はもちろん、学生への指導にも力を注ぎ、着実に実績を積み上げていったのです。
研究室という小さな舞台で磨かれたのは、探究心と人を育てる力でした。
東京都立大学での転機と挑戦
次の転機は1992年。
北川氏は東京都立大学（現・東京都立大学）理学部教授に就任します。
ここでは、のちに世界を驚かせる「MOF（多孔性金属有機構造体）」研究の土台が築かれていきました。
当時の研究テーマはまだ世の中に浸透しておらず、試行錯誤と地道な努力の連続だったといわれています。
母校・京都大学への凱旋
そして1998年、母校・京都大学工学研究科教授に就任。
まさに凱旋ともいえるこのタイミングから、彼の活躍はさらに加速します。
研究だけでなく、組織を動かすリーダーとしての姿勢も際立ちはじめた時期でした。
iCeMS拠点長としての革新
特に大きな転機となったのが、2013年に京都大学物質−細胞統合システム拠点（iCeMS）の拠点長に就任したことです。
この拠点は、化学・物質科学と細胞・生命科学を融合させ、新たな価値を創出する最先端の研究施設。
北川氏は分野横断的な連携を推進し、国内外から高い評価を受けました。
まさに分野を越えた科学の架け橋といえる存在だったのです。
京都大学特別教授、そして副学長へ
さらに2017年には、京都大学特別教授に就任。
この職位は、顕著な研究業績を持つ研究者に与えられる現役のポジションであり、まさに“大学の顔”とも言える存在です。
教育者、研究者、そしてリーダーとしての資質を併せ持つ北川氏ならではの任命と言えるでしょう。
理事・副学長として大学運営の中枢へ
その後も歩みは止まりません。
2024年4月には、京都大学の理事・副学長に就任。
大学運営の中枢を担う立場として、研究だけでなく教育・組織マネジメントにも貢献しています。
研究者から経営者へ。まさに進化の道のりでした。
総合研究推進本部長としての新たな挑戦
そして2025年1月には総合研究推進本部長に就任。
このポジションは、京都大学全体の研究戦略や新たなプロジェクトの推進に関与する非常に重要な役職です。
北川氏はここでも、研究と社会をつなぐビジョンを掲げ、大学の未来を切り拓いています。
次世代育成への情熱
ここまでの道のりを見ると、北川氏は単に研究成果を出してきただけではありません。
若手研究者の育成にも熱心で、母校である高校の生徒を自らの研究室に招いたり、講演活動にも力を入れたりと、未来の科学者たちに希望と刺激を与え続けてきました。
その姿は、次世代を育てる教育者の鏡といえるでしょう。
「幸運は準備された心に宿る」
「幸運は準備された心に宿る」――これはノーベル賞受賞会見で北川氏が子どもたちに贈ったメッセージです。
まさにその言葉どおりの生き方を、彼自身が体現しているように感じられます。
北川進氏の道のりは、ただのキャリアアップではなく、信頼と実力に裏打ちされた“研究者としての本質的な成長”の物語なのです。
北川進の知られざる過去と影響
ノーベル化学賞を受賞し、京都大学の副学長も務める北川進氏。
経歴や肩書きは多く語られていますが、その裏にある“人となり”や“原点”については、あまり知られていません。
この記事では、そんな彼の知られざる過去と、周囲に与えてきた影響にフォーカスします。
幼少期に芽生えた探究心
北川氏が生まれ育ったのは、京都市下京区・四条河原町のにぎやかなエリア。
3人兄弟の長男として、活発で好奇心旺盛な幼少期を過ごしたといいます。
鴨川沿いを遊び場にし、自然と街が入り混じる環境の中で、日々の中にたくさんの「不思議」を見つけていたようです。
まさに探究心の原点ともいえる環境でした。
構造への興味と“遊び”の科学
特に印象的なのが、子どもの頃から身の回りの構造物に興味を持ち、時計やラジオを分解して中の仕組みを観察するのが大好きだったというエピソード。
「なぜ？」「どうなってるの？」という問いが、遊びの中から自然と湧き上がっていたのでしょう。
のちに世界的な研究となるMOF（多孔性材料）の構造解析に没頭する姿も、この“原体験”からつながっているように思えます。
遊びが学びに変わる瞬間。そこにすでに未来の科学者の姿がありました。
子ども時代に描いた夢
また、小学校の文集には「天気の仕組みを解明する研究者になりたい」と書いていたことも知られています。
子どもらしい素朴な夢ではありますが、「自然現象を科学的に理解したい」という意識は、すでにこの頃から芽生えていたことがうかがえます。
幼いながらも、世界の成り立ちに興味を持ち続けた観察者のまなざし。
それが北川氏の研究者としての出発点だったのかもしれません。
スポーツから学んだ継続力
意外にも、勉強一筋というタイプではなく、バレーボール部に所属するスポーツ少年でもあった北川氏。
運動神経も良く、仲間との連携やチームワークを大切にしていたそうです。
スポーツと研究は一見かけ離れているように見えますが、どちらにも共通しているのは「継続力」と「忍耐力」。
粘り強さの源泉は、そんな経験から培われたのかもしれません。
教育への情熱と次世代へのバトン
そしてもう一つ、彼が高く評価されているのが教育に対する熱意です。
自身が卒業した京都市立開建高等学校（現・塔南高等学校）には、今でも生徒たちを研究室に招き、最先端の科学に触れてもらう機会を積極的に設けています。
一度頂点に立った人間がそこに安住せず、次の世代へバトンを渡そうとする姿勢には、教育者としての真摯な思いが感じられます。
研究だけでなく、人を育てる使命。その両方を体現しているのです。
「幸運は準備された心に宿る」
2025年のノーベル賞受賞後の記者会見でも、北川氏はこんな言葉を残しています。
「幸運は準備された心に宿る」。
研究が認められるまで20年以上。どれだけ準備を重ね、失敗を積み重ね、心を折らずに耐えてきたのか――。
その背景を思うと、この一言がいかに重みのある言葉かが伝わってきます。まとめ
地元・京都に与えた影響
また、地元・京都の政財界からは、「夢と希望を与える存在」としての声も多く挙がっています。
研究の成果だけではなく、その生き方そのものが、多くの人にとってのロールモデルになっているのです。
科学の枠を超えて、地域社会にまで影響を与える存在。
まさに人間としての深みを感じます。
本当の影響力とは
北川進氏は、単なる「天才研究者」ではありません。
幼少期からの純粋な好奇心を大切に育みながら、努力と信念で道を切り開き、いまなお次世代に希望を届け続ける。
その姿にこそ、彼が与えてきた“本当の影響力”があるのではないでしょうか。
まとめ
ノーベル賞という栄誉に輝いた北川進氏ですが、その歩みは決して平坦ではありませんでした。
幼少期の素朴な好奇心から始まり、懐疑的な目にも屈せず研究を積み重ね、教育者としても次世代を育て続ける姿。
科学の可能性を信じ、地道な努力を惜しまなかったからこそ、世界に認められる存在となったのでしょう。
北川氏の人生は、誰にとっても学びと希望にあふれた物語です。
