南鳥島沖に眠る、かつてない規模のレアアース資源。

それは、世界が今、喉から手が出るほど欲しがっている“未来のカギ”です。

けれども現状、日本はそのほとんどを中国に依存しています。

安定供給を国産でまかなう。

・・・そんな理想は、果たして本当に実現できるのでしょうか?

問題は山積みです。

採掘には天文学的なコストがかかり、技術的なハードルも決して低くはありません。

海底深くから資源を引き上げるというのは、想像以上に過酷で、地味で、シビアな作業なんです。

それでも、いま国家規模の予算が投じられ、技術開発が驚くようなスピードで加速しているのはなぜなのか。

そこには、単なる「資源確保」という言葉では到底語り尽くせない、もうひとつの大きな理由があるのです。

このプロジェクトが握るのは、日本の産業の命運だけではありません。

ひょっとすると、この国の未来のかたちそのものかもしれない。

さて、その“もうひとつの視点”とは?




南鳥島レアアース採掘とは?

「南鳥島ってどこ?」

「そもそもレアアースって、なぜそんなに重要なの?」

そんな疑問を持った人も多いはずです。

まずはその前提から、できるだけ丁寧に整理していきましょう。

 

南鳥島は、東京都の小笠原諸島に属する日本の最東端の島です。

東京からはおよそ1,950km――太平洋のど真ん中に、ぽつんと浮かんでいます。

日本の最東端という立地。

 

その面積はわずか約1.5平方キロメートルほど。

あの昭和記念公園とほぼ同じくらいの広さしかありません。

想像以上に小さな島。

しかし、注目されているのは島そのものではありません。

本当に価値があるのは、その沖合の深海です。

2013年、東京大学などの研究チームが、水深5,000〜6,000メートルという超深海で、「レアアース泥」と呼ばれる資源層を発見しました。

ここが世界から熱視線を浴びる理由のひとつと言われています。

 

レアアースとは、電気自動車(EV)のモーター、風力発電、スマートフォン、防衛装備など、現代テクノロジーに欠かせない希少金属の総称です。

ネオジム、ジスプロシウム、テルビウムなど、聞き慣れない名前かもしれません。

しかし、私たちの暮らしの“裏側”に必ず存在している素材なのです。

 

そんなレアアースですが、現在の日本はその60〜70%を中国からの輸入に依存しています。

2026年1月には、中国が軍民両用(デュアルユース)品目の輸出規制を強化する方針を発表しました。

その中にレアアースも含まれる可能性があるとして、にわかに緊張が走ったのです。

 

「もし、輸出が止まったら?」

そんな不安が、いよいよ現実味を帯び始めています。

だからこそ、いま大きな期待が寄せられているのが、南鳥島沖のレアアース泥なのです。

 

この海域の泥には、平均で5,000ppmという高濃度のレアアースが含まれています。

これは中国の陸上鉱山を大きく上回る水準です。

さらに推定埋蔵量は約1,600万トンとされ、日本の年間需要の数百年分に相当すると言われています。

 

もうひとつの強みは、放射性物質がほとんど含まれていないことです。

しかも、希塩酸で抽出できるため、環境負荷が比較的低い点でも注目を集めています。

いわば、“クリーンな夢の資源”と呼べる存在でしょう。

 

そして、ついに2026年1月11日。

JAMSTEC(海洋研究開発機構)の地球深部探査船「ちきゅう」が、南鳥島南東沖およそ150kmの排他的経済水域(EEZ)内で、試験採掘をスタートさせました。

水深6,000メートル級という深海から泥を直接引き上げる試みは、世界でも前例のないチャレンジです。

 

気象の影響でスケジュールに多少の調整はあったものの、日本の資源開発史における歴史的な一歩と言っていいでしょう。

ここまで聞けば、誰もが思うのではないでしょうか。

「まさに夢の資源じゃないか」「これは日本の切り札になりうる」と。

 

しかし、問題はここからです。

本当にこの資源は、“ビジネス”として成立するのでしょうか。

つまり、採って売って、ちゃんと儲かるのか。

次の章では、いよいよこのプロジェクトの「現実的な数字」に踏み込んでいきます。




採算性はあるのか徹底検証!

南鳥島沖のレアアース採掘──。

まるで夢のようなプロジェクトに思えますが、気になるのはやっぱりここです。

「本当に儲かるの?」というリアルな問いを避けて通れませんよね。

 

結論から言うと、2026年1月現在、採算が取れるかどうかはまだ“未知数”です。

将来的な可能性はあるものの、現時点ではコストの壁が非常に高いのが実情と言われています。

期待と現実のギャップ。

 

まず大前提として、南鳥島は東京からおよそ1,950kmも離れた場所にあります。

しかも、採掘対象となるのは水深約6,000mの“超深海”です。

これだけで、すでにハードモードではないでしょうか。

超深海の採掘難度。

そんな場所から資源を引き上げるには、特殊な探査船と莫大なコストが必要になります。

 

実際、今回の試験採掘に使われているのは、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の地球深部探査船「ちきゅう」です。

2026年1月11日の出港予定が天候で1日ずれ、12日に南鳥島沖へと出発しました。

現在(1月12日時点)も採掘作業は進行中で、2月14日までのスケジュールで試験が実施される予定です。

 

このプロジェクトには、1日数千万円、年間で百数十億円規模の費用がかかると言われています。

加えて、レアアース泥を引き上げ、処理し、本土へ運ぶまで、あらゆる工程でコストがかさみます。

つまり、掘る前から“重課金”の構造なのでしょうか。

巨大なコスト構造。

 

では、肝心のレアアース泥にはどれほどの価値があるのでしょう。

平均濃度5,000ppmの泥から抽出できるレアアースは、1トンあたり約5kg程度と見込まれています。

これを市場価格で換算すると、約50万円前後になると推定されています。

 

「それなら十分利益が出るのでは?」と思うかもしれません。

しかし、実際のコストは、この価値を大きく上回る可能性があるのです。

ある専門家によれば、中国産レアアースの20〜30倍のコストになる恐れもあるとのことです。

 

中国は、地上の鉱山から効率的に採掘・処理できる体制をすでに構築済みです。

それに対し、南鳥島のような深海採掘は、コスト構造そのものが根本的に違うと言い切っていいでしょう。

同じ“レアアース”でも、土俵が別物というわけですね。

 

さらに問題なのが、島内にほとんど産業インフラが整っていないという点です。

設備がない場所で、設備を動かさねばならない矛盾。

この課題を受けて、日本政府は2025年度の補正予算にて、約164億円を投入しました。

 

島内に脱水・運搬施設を整備し、そこで一次処理を行うことで輸送コストを3割削減する狙いです。

ただ、それでもなお採算ラインに届くかどうかは微妙というのが現実ではないでしょうか。

コスト削減の限界。

 

スケジュール面にも注目です。

2027年2月以降には、1日最大350トン規模の大規模試掘を予定しています。

その結果をもとに、2028年以降の商業化を検討し、2030年代の実用化を目指す流れになっています。

 

つまり、「目に見える利益」が出るのは、かなり先の話です。

中国による輸出規制の“すぐ効く対策”にはなりづらく、民間企業が軽々しく参入できるステージではありません。

短期の収益ではなく長期の布石、と考えるのが自然なのでしょうか。

 

それでもなお、このプロジェクトには揺るがぬ価値があると言われています。

なぜなら、ここには経済的な利益を超えた、“戦略的な意味”が確かにあるからです。

だからこそ、国が動き、大規模な予算が投じられ、今この瞬間も海の底で試掘が進められているのです。

 

次の章では、なぜ「高コストでもやる意味がある」のか。

その裏にある国家的な狙いと、未来につながる可能性について掘り下げていきます。




高コストでも期待される理由

ここまで読んで、「そんなにコストがかかるなら、正直やらなくてもいいのでは?」と感じた人もいるはずです。

それでもなお日本が南鳥島レアアース採掘に本気で取り組む理由は、単なる“儲け話”とは次元が違うからです。

このプロジェクトの根幹にあるのは――経済安全保障という極めて重要なテーマ。

 

レアアースは、電気自動車や再生可能エネルギーに欠かせないだけではありません。

ミサイルの誘導装置、レーダー、防衛装備などにも使われる戦略物資なんです。

つまり、“あって当たり前”の存在でありながら、止まった瞬間に国家機能に影響が出るレベルの重要性を持っています。

 

そんなレアアースの供給を、いま日本はほぼ一国(中国)に握られている状態です。

これは想像以上にリスクが高い状況と言っていいでしょう。

実際、2026年1月6日、中国商務部は日本向けの軍民両用(デュアルユース)品目の輸出規制を即日発動しました。

レアアースが明記されたわけではないものの、対象に含まれる可能性は高く、すでに調達に影響が出始めているとの報道もあります。

 

「いつ止められてもおかしくない」――そんな現実が、すでに“起きている”。

だからこそ、日本が南鳥島沖に自前で管理できるレアアース資源を持っているという事実には、金額以上の重みがあります。

たとえ今は赤字でも、「持っている」ということそのものが交渉のカードになるのではないでしょうか。

これこそが、このプロジェクトの最大の意義とも言えるのです。

 

もうひとつ注目すべきなのは、技術面での波及効果です。

6,000mという超深海から泥を安定して揚げるには、エアリフト方式をはじめとする最先端の海洋技術が必要不可欠になります。

この技術が確立されれば、レアアースだけでなく、マンガンノジュールなど他の深海資源開発にも転用可能です。

つまり、南鳥島は「資源の宝庫」であると同時に、「次世代技術の実験場」でもあるのです。

 

また、島内での処理施設建設や関連インフラ整備によって、建設業・運輸・エネルギー分野にも雇用と経済効果が波及します。

長期的には、関連産業全体で数千億〜1兆円規模の経済効果が見込まれるという試算もあるといわれています。

経済波及という追い風。

 

そして忘れてはならないのが、国際的な意味合いです。

トランプ政権時代から、アメリカはレアアースの確保を国家戦略の柱に位置づけ、日本との連携も強化してきました。

南鳥島の開発は、こうした日米の地政学的な連携とも一致しており、今後の国際協力においても極めて重要な拠点となりえます。

 

もちろん、これは理想論だけではありません。

もしも技術が進み、採掘コストが泥1トンあたり2万円程度まで下がれば状況は一変するのでしょうか。

年間100万トン規模の生産が可能になれば、売上はなんと5,000億円超に到達すると見込まれています。

 

そうなれば、いまは“赤字覚悟の国家プロジェクト”であっても、将来的には現実的な資源ビジネスへと進化する可能性があります。

南鳥島レアアース採掘は、日本が「資源を買う国」から「資源を持つ国」へ変わるための挑戦です。

目先の採算ではなく、10年後・20年後の日本の立場を守るための一手と言い切っていいでしょう。

静かですが、確実に――この国の未来を左右する大きなプロジェクトなのです。




まとめ

莫大な埋蔵量と、未踏の深海で進む採掘計画

南鳥島のレアアースは、ただの資源ではありません。

日本にとって、地理的にも経済的にも“特別な存在”なのです。

確かに、コストは高い

それに、すぐに成果が出るような話ではないのも事実です。

 

それでも、多くの研究者や技術者が動き、国が本気で腰を上げているのはなぜか。

そこには、目先の利益だけでは計れない価値があるから。

「今すぐ儲かるかどうか」ではなく、
10年後、20年後のこの国の立場をどう守るか

その問いに対する答えが、南鳥島の海底に眠っているのかもしれません。

静かに、しかし確かに進むこの挑戦の先には、
私たちがまだ見たことのない未来が、すでに動き出しているのです

ABOUT ME
to-chan
元介護施設職員、現ブロガー、雨を愛する人 自動車好き、読書、光輝くもの好き 座右の銘:朱に交われば赤くなる 好きな四字熟語:一期一会