
本来なら、地域を守るために動くはずの人たちが、なぜ動かなくなったのか?
そして、そのきっかけとなった“ある一言”とは。
北海道・積丹町で起きたヒグマ駆除をめぐる騒動は、いま静かに、しかし確実に広がりを見せています。
猟友会の決断、町議の振る舞い、そしてそれぞれの立場にある背景とは?
一見シンプルに見える出来事の裏には、いくつもの感情と現実が交差していました。
猟友会が駆除を拒否した理由
2025年9月、北海道・積丹町で起きたある騒動が、思いのほか大きな波紋を広げています。
町内に突如現れたのは、体重およそ284kgの巨大なヒグマ。
その出没場所は、なんと町議の自宅裏という住宅地のすぐ近くでした。
急行したのは、地元の猟友会のメンバーたち。
彼らは、日頃から地域のクマ対策に取り組むボランティアのハンター集団です。
現場では箱罠によってヒグマの捕獲が行われ、駆除作業が進められていました。
しかし、そのさなか現れたのが町議本人。
そしてこの瞬間から、思いがけないトラブルが巻き起こります。
安全確保のため、ハンターが「離れてください」「どなたですか?」と声をかけると、町議は突如として激昂。
報道によれば、その場でこう言い放ったのです。
「誰にモノを言ってるのか」
「こんなに人数が必要なのか。金貰えるからだろ」
「俺にそんなことするなら駆除もさせないようにするし、議会で予算も減らすからな。辞めさせてやる」
北海道の積丹町で、町議会議員の自宅近くにクマ出没
↓
出動した猟師が議員に対して「危ない!離れろ!」と発言
↓
議員「は?猟師ごときが口の利き方に気をつけろ!辞めさせてやるぞ」
↓
猟師「ほな辞めますわ」
↓
議員「え?」
↓
翌日、猟友会が町に対し出動拒否を表明
↓
町議「ちょ…」(今ここ) pic.twitter.com/qV5sMSDUdV— 滝沢ガレソ (@tkzwgrs) October 26, 2025
引用元:滝沢ガレソ のX
……あまりに過激な言葉の数々。
ハンターたちはこれを脅迫や侮辱と受け取り、その日の作業を中断して撤収。
翌日には町に対し、「今後、出動を見合わせる」と正式に通告を出す事態に発展しました。
ここで忘れてはいけないのは、猟友会の活動が命を懸けた奉仕であるという点です。
金銭目当てではありません。
にもかかわらず、立場ある町議からこうした発言を受けたのですから、心が折れてしまうのも当然でしょう。
「もう出動したくない」
「自分たちの命が軽く扱われている」
そんな怒りと虚しさが、一気に噴き出しました。
町はその後、関係修復に向けて猟友会との対話を重ねてきましたが、10月21日の内部協議を経ても、出動再開の目処は立っていません。
秋はヒグマの出没が増える季節。
「また出たら、誰が対応するのか?」
町民の不安は、日に日に募っています。
これは単なる一議員と猟友会との“口論”ではありません。
地域の安全を脅かす、命に関わる深刻な問題として、今まさに局面を迎えているのです。
そして次に焦点を当てるのは・・・事態の中心にいた町議、海田一時氏とは何者なのか。
その素顔に迫ります。
海田一時と猟友会の関係とは
さて、今回の騒動の発端となった町議・海田一時(かいた かずよし)氏とは、いったいどんな人物なのでしょうか?
そして、なぜ猟友会との対立にまで発展してしまったのでしょうか。
海田氏は1951年生まれの74歳。
北海道・積丹町に長年暮らす人物で、地元では酪農業を営む農業従事者として知られています。
肉用牛の品評会で優勝経験もあるなど、地元農業界では実績を積み重ねてきた人物です。
政治の道へ進んだのは1980年代初頭。
以来、地元の支持を背景に町議に5期連続当選を果たし、2025年9月30日には副議長に就任しました。
「地域密着のベテラン議員」
そんな評価を得ていた一方で、猟友会とのトラブルが表面化したのは今回が初めてです。
本来、町議会と猟友会は“協力関係”にあるはず。
行政が予算や制度を整備し、それに基づいて猟友会が駆除活動を担うという構図です。
それが、なぜここまで関係がこじれてしまったのか。
ひとつの大きな要因は、出没・捕獲現場が海田氏の自宅近くだった点です。
自分の生活圏にヒグマが現れたことで、感情的な反応が強く出た可能性があります。
報道によると、海田氏はハンターに対し激高し、暴言を吐いたとされる場面があったとのこと。
その内容は、猟友会にとって到底受け入れがたいものでした。
「こんなに人数が必要なのか。金貰えるからだろ」
「俺にそんなことするなら駆除もさせないようにするし、議会で予算も減らすからな。辞めさせてやる」
これらの発言は、ただの言い争いでは済まされません。
猟友会の多くは、自費で装備を整え、危険な現場に立ち向かうボランティアです。
報酬目当てなどでは決してありません。
そんな彼らに向けられたこの言葉は、まさに存在そのものを否定されたようなもの。
猟友会の側からすれば、長年積み重ねてきた信頼を一瞬で壊された感覚だったはずです。
一方、海田氏は報道取材に対し、「『やめさせてやる』とは言っていない」と発言の一部を否定。
「一町議にそんな権限はない」とも主張しており、現時点では謝罪や辞職の動きは見られていません。
しかしネット上では厳しい声が相次いでいます。
特にXでは、「#海田一時」などが拡散され、「議員として不適格では?」「町民を守る立場の人間がこれでいいのか」といった声が飛び交っています。
その老害はだれ? pic.twitter.com/fuqeWWvXSB
— らぶしもんず@ (@RAFSIMONS_2) October 26, 2025
引用元:らぶしもんず@ のX
また、X上で「海田一時の娘」を名乗るアカウントが謝罪投稿をしたとされる出来事もあり、波紋はさらに広がっています(ただし真偽は不明です)。
画像に箱罠が映っているから、その箱罠にかかった熊を射殺しようとした時に、周りに集まっていた野次馬のおひとりが件の議員さんだったのでしょうね。
ゼロ距離からの発砲なので、熊の身体を貫通する際に骨などに当たって、思わぬ方向へ流れ弾となって飛んでいくことがあるので危ないのです。— にゃんだニャン (@nyanda_nyan) October 26, 2025
引用元:にゃんだニャン のX
議員がいつから偉くなったんだ。
危険の中で出勤してくれた猟師さんに感謝でしょ。
なんて酷い話だ😢— ぼのサブ (@DMF_BonoBonosub) October 26, 2025
引用元:ぼのサブのX
現時点で、この問題の“収束”は見えていません。
そして問題の核心には、町議と現場の意識のズレ、立場の力関係、地域社会の信頼の断裂という深い溝が横たわっています。
では、この事態に対し、住民たちはどんな思いを抱いているのでしょうか?
次のパートでは、町民の声や広がる不安について詳しく見ていきます。
暴言の詳細と町民の不安拡大
猟友会が出動を拒否するという異例の対応。
そして、その原因とされる町議の暴言。
この事態のしわ寄せを受けているのが、ほかでもない積丹町の町民たちです。
「もしまたヒグマが出たらどうなるのか…」
「近くの山に入るのも怖い」
そんな声が、住民の間で次第に強くなっています。
というのも、ヒグマの出没は今回だけではありません。
実際、2025年上期だけでクマ被害が数百件報告されているという情報もあり、道内では緊張が高まっています。
とくに秋は、クマが食料を求めて活発に動く季節。
そのタイミングで、地域を守るはずの猟友会が活動停止というのは、町民にとっては深刻な問題です。
そこにさらに火をつけたのが、町議・海田一時氏の発言内容でした。
報道によれば、ヒグマ駆除の現場でハンターに対し、海田氏はこう言い放ったとされています。
「誰にモノを言ってるのか」
「こんなに人数が必要なのか。金貰えるからだろ」
「俺にそんなことするなら駆除もさせないようにするし、議会で予算も減らすからな。辞めさせてやる」
こうした言葉が事実であれば、住民の安全を守ろうとしている人たちを脅すような行為と受け取られても仕方がありません。
しかも、これは単なる“暴言”では済まされません。
猟友会にとっては、自分たちの存在意義すら否定されたようなものだったのです。
この件を受け、SNSでも怒りの声が噴出。
Xでは「#海田一時」などの関連ワードが拡散されました。
「ハンターにあんな口のきき方をして町議が務まるのか」
「現場を知らなすぎる」
「命がけの活動を軽視するな」
などといった批判の声が相次ぎ、事態はネット上でも大炎上。
中には、「リコールを求めるべきだ」といった意見もあり、一部では署名活動を呼びかける投稿も見られました。
さらには、X上で「海田一時の娘」を名乗るアカウントが謝罪投稿をしたとされる件も話題に。
投稿の真偽は不明ですが、町議本人が沈黙を続ける中、家族が火消しに動いたのでは?との憶測も飛び交いました。
では、行政側はどう動いたのでしょうか。
10月9日の町議会ではようやく情報共有の不足が取り上げられ、町側も説明責任を意識し始めました。
しかし、住民の間では「対応が遅すぎる」という声が後を絶ちません。
その後、町は補正予算で箱罠の設置や監視体制の強化など、独自のクマ対策を進めています。
ただ、現場で実際に駆除を行う猟友会との連携が回復していない以上、万全とは言えません。
実際、10月21日の猟友会内部協議でも「解除すべきでない」との意見が強く、出動再開には至っていない状況です。
つまり、クマが出ても動ける人がいない・・・。
これは、行政の対応ではどうにもならない根本的な問題です。
町民の間には「自分たちの命が、町議ひとりの対応ミスで危険にさらされているのでは?」という不信感も漂い始めています。
安全な暮らしは、信頼の上に成り立つもの。
それが失われた今、必要なのは責任ある説明と、信頼を取り戻すための行動ではないでしょうか。
まとめ
積丹町で起きたヒグマ駆除出動拒否の背景には、想像以上に根深い問題がありました。
町議・海田一時氏の発言は、単なる言葉の行き違いにとどまらず、地域の信頼や安全に大きな影響を与えています。
猟友会の判断、町民の不安、行政の対応。
それぞれの立場が交錯する中で、今求められているのは責任ある対話と再構築された信頼関係です。
地域の安全を守るために、真に必要なのは何か。
今回の騒動は、私たちにその問いを投げかけています。





