市川市動植物園のニホンザル「パンチくん」が“いじめられているのでは?”と話題になっています。

SNSで拡散された映像をきっかけに、不安や怒りの声が一気に広がりました。

胸がざわついた人も、少なくなかったはずです。

一方で、「それは群れに戻るための適応過程では?」という見方も浮かび上がっています。

本当にいじめなのか。

それとも、サル社会ならではの厳しい通過儀礼のようなものなのか。

白か黒かで割り切れないからこそ、議論は揺れ続けます。

飼育員の見解はどうなのか。

今、パンチくんはどんな様子なのか。

そして“群れ復帰”という大きなテーマを軸に、見えてくるものは何なのか。

断片的な映像だけで判断してしまいがちな私たちにとって、立ち止まって情報を整理することは、実はとても大切な作業です。

感情が先に走るのは自然なことです。

けれど、感情だけでは届かない背景があるのもまた事実。

サルの社会にはサルの秩序があり、人間の物差しだけでは測れない世界があります。

パンチくんの姿は、ただの“かわいそう”で終わらせていいのでしょうか。

そこに映っているのは、群れの中で生きるという現実かもしれません。

私たちはその姿から、何を受け取り、どう向き合うべきなのか。

静かに、でも真剣に考える時間が求められています。

市川市動植物園パンチくんいじめ疑惑とは?

2026年2月19日頃に撮影・拡散された動画が、SNS上で大きな波紋を呼びました。

舞台は千葉県の市川市動植物園。

主役は、2025年7月26日生まれのニホンザルの子ザル「パンチくん」です。

動画の内容は、衝撃的なものでした。

パンチくんが他の子ザルに近づこうとします。

しかし相手は嫌がり、すっと距離を取る。

その直後、大人のサルに捕まえられ、地面を引きずられるような場面が映ります。

そして最後、母親代わりのぬいぐるみ“オラン母”にしがみつく小さな姿——。

この数十秒が、YouTubeやXで一気に拡散されました。

「いじめでは?」

「かわいそう」

「飼育員は何をしているの?」

怒りと心配が、雪崩のように広がっていきます。

観覧エリアで「いじめないで!」と叫ぶ来園者もいたというから、現場の空気は相当張り詰めていたのでしょう。

さらに海外からも問い合わせが相次ぎ、石川県の「いしかわ動物園」に誤って連絡が入るという思わぬ事態まで発生。

園が注意喚起を出すほどの騒動へと発展しました。

なぜ、ここまで人の感情を揺さぶったのか。

その背景には、パンチくんの特別な生い立ちがあります。

母ザルは初産。

加えて酷暑の影響もあったとされ、結果的に育児放棄に。

生後すぐ人工哺育へ切り替わりました。

そして彼が常に抱いているのが、オランウータンのぬいぐるみ。

通称「オラン母」「ママ」です。

小さな体でぬいぐるみにしがみつく姿は、多くの人の心をつかみました。

その様子は国内外で拡散され、ワシントン・ポストでも報じられるほどの注目を集めます。

“ママを抱きしめる健気な子ザル”。

このイメージが強く共有されていたからこそ、今回の映像は「弱い子がいじめられている構図」に見えてしまった。

そう考えると、私たちの受け止め方にも物語が重なっていたのかもしれません。

ですが——本当にいじめなのでしょうか。

それとも、別の意味があるのでしょうか。

ここからが本題です。

パンチくんはいじめでなく群れ適応の躾

市川市動植物園は2月20日、公式Xで異例の声明を発表しました。

結論は明確です。

「いじめではない」という見解でした。

動画でパンチくんを引きずったのは、近づかれた子ザルの母親である可能性が高いとの説明。

子ザルが嫌がっていたため、「嫌なことをするな」と叱った行動だといいます。

ニホンザルの群れは、非常に厳しい上下関係とルールで成り立っています。

距離感。

順番。

接触の仕方。

どれも、社会の中で体で覚えていくものです。

人間社会で例えるなら、幼稚園に入ったばかりの子どもが距離を間違えて注意されるようなもの。

悪意というより、社会のルールを教える時間といったほうが近いのかもしれません。

人工哺育で育った個体は、群れの中で学ぶ機会がどうしても少なくなります。

そのため、群れ復帰の過程では怒られやすい傾向があるそうです。

園によると、これまでも叱られる場面はあったものの、本気で攻撃しようとするサルはいないとのこと。

怪我も確認されていません。

動画のあとも、12時と15時のエサの時間には普段通り。

2月21日夕方時点でも、怒られる場面はあったものの怪我はなく、元気に過ごしていると更新されています。

ここで意識したいのが「動画の切り取り」です。

数十秒の映像では、その前後の流れまでは分かりません。

もしかするとパンチくんがしつこく追いかけていた可能性もある。

私たちは断片だけを見て、無意識に物語を補完してしまいます。

とくに“守ってあげたい存在”であれば、なおさらです。

けれど、飼育員は常に近くで見守り、危険があればすぐ介入する体制を取っています。

今回も状況を確認したうえで問題なしと判断しています。

「かわいそう」と感じる気持ちは自然です。

ただ、その感情だけで結論を急ぐのは少し早いのかもしれません。

パンチくんにとって今は、群れ社会という大きな学校に入学したばかり。

いわば“社会デビュー”。

厳しさの中で学ぶ時間。

それが群れ適応の現実です。

パンチくん現在の様子と今後

2026年2月21日時点で、パンチくんは元気に過ごしています。

群れの中での挑戦は続いています。

けれど、少しずつ変化も見え始めました。

最近では、他のサルに毛づくろいされる様子や、自ら毛づくろいする姿も確認されています。

毛づくろいはサル社会における信頼や受容のサイン。

距離が縮まりつつある証ともいえます。

園は「パンチは立ち直りが早く、メンタルが強い」とコメントしています。

ぬいぐるみに逃げ込む姿は、見ているこちらの胸が締めつけられます。

けれど時間が経てば、自ら離れ、また群れへ向かっていく。

挑戦して。

怒られて。

戻って。

また挑戦する。

その繰り返しです。

SNSでは「#がんばれパンチ」という応援ハッシュタグも広がりました。

「かわいそう」から「応援したい」へ。

世論は少しずつ変化しています。

一方で来園者は急増。

園はマナーを守り、静かに見守るよう呼びかけています。

大声や過度な反応は、群れの緊張を高めてしまう可能性もあるからです。

パンチくんにとって本当に必要なのは、静かな環境と時間。

完全に群れに溶け込むには、まだ時間がかかるでしょう。

それでも確実に一歩ずつ前へ進んでいます。

「いじめ」ではなく、成長の過程。

小さな体で大きな社会に挑むパンチくん。

その姿を、少しだけ引いた視点から見守る。

それが今、私たちにできることなのかもしれません。

 

まとめ

今回の市川市動植物園・パンチくんの「いじめ」疑惑は、拡散された映像だけでは判断できない側面が多くありました。

数十秒の切り取りだけで、すべてを語るのはやはり難しい。

そう感じた人も、きっと少なくないはずです。

群れ適応の過程で起きる出来事だと知ると、景色は少し違って見えてきます。

厳しさの中で学び、ぶつかり合いながら距離を縮めていく。

その姿は、まさにサル社会のリアルそのものです。

私たちはつい、人間の物差しで「かわいそう」「いじめだ」と決めつけてしまいがちです。

けれど自然の社会には、自然のルールがあります。

そこには感情だけでは測れない時間の流れがある。

パンチくんは今も、挑戦の途中にいます。

怒られて、戸惑って、それでもまた輪の中へ入っていく。

その繰り返しです。

小さな体で、大きな社会に向き合っている最中。

その一歩一歩をどう受け止めるのか。

見る側の姿勢によって、この出来事の意味は大きく変わります。

ただ心を痛めるだけで終わるのか。

それとも成長の過程として、静かに見守るのか。

感情だけで完結させず、背景まで知ろうとすること

それがいま私たちにできる、いちばん誠実な応援なのかもしれません。

ABOUT ME
to-chan
元介護施設職員、現ブロガー、雨を愛する人 自動車好き、読書、光輝くもの好き 座右の銘:朱に交われば赤くなる 好きな四字熟語:一期一会