ガソリン暫定税率廃止が決まった。

それを聞いて、正直ほっとした人も多いはずです。

毎日の生活費に直結する話ですから、期待が膨らむのも無理はありません。

でも、本当にそれだけで暮らしは楽になるのでしょうか。

そんな空気に水を差すように、ある言葉が強く響きました。

岡山県の伊原木隆太知事が記者会見で口にした、「勘弁してほしい」という一言。

 

思わず本音がこぼれたようにも聞こえ、多くの人の視線が集まりました。

なぜ地方のトップが、そこまでの危機感をにじませたのか。

ポイントは、ガソリン税そのものだけではありません。

国と地方の関係、そして将来の財政への不安。

そうした複雑な背景が、あの短い言葉の裏に詰まっています。

表では家計に優しい顔をしながら、別の場所では静かに広がる影響。

知らないままでいると、ある日ふと気づくことになります。

「あれ、いつの間にこんな状況に?」と。

ガソリン暫定税率廃止で、実際に何が起きるのか。

伊原木隆太知事の発言を手がかりに、その背景と意味を、少し立ち止まって考えてみます。




ガソリン暫定税率廃止とは何か制度の前提

ガソリン暫定税率廃止とは、ガソリン税と軽油引取税に上乗せされてきた暫定税率部分を段階的に廃止する政策のことです。

具体的には、ガソリン税の暫定税率である1リットルあたり25.1円が2025年12月31日で廃止されます。

軽油引取税の暫定税率である1リットルあたり17.1円は、2026年4月1日に廃止される予定です。

一言で「ガソリン暫定税率廃止」とまとめられがちですが、実態はもう少し複雑ではないでしょうか。

ガソリンと軽油では廃止の時期が違う。

このズレは、意外と見落とされやすい重要なポイントです。

 

そもそも、この暫定税率は1970年代に「一時的な措置」として導入されました。

ところが現実には、約50年以上も続くことになります。

暫定という名前とは裏腹に、国や地方にとっては欠かせない税収源に育ってしまったわけです。

制度と現実のギャップ。

ここに、今回の問題の根深さがあると言っていいでしょう。

かつてガソリン税は、道路整備のための「道路特定財源」でした。

しかし2009年以降は、一般財源へと切り替えられています。

今では使い道が道路に限定されているわけではなく、幅広い分野に充てられています。

地方自治体にとっては、福祉や教育、インフラ維持を支える土台のような存在です。

 

税収の流れも、思った以上に複雑です。

地方揮発油税や軽油引取税は地方税として、都道府県などに直接入ります。

さらに、揮発油税の一部は地方譲与税として自治体に配分される仕組みです。

つまり暫定税率がなくなると、地方財政にはダイレクトな打撃が及ぶ構造になっています。

一方で、国民側の感覚はかなり違うのではないでしょうか。

ガソリン価格の高騰

物価上昇。

物流コストの増大。

「なんでもかんでも上がり過ぎ、せめてガソリン代だけでも下げてほしい」という声が強まったのは、自然な流れだといえます。

 

国は、こうした世論を背景に暫定税率廃止を決断しました。

ただ、ここで引っかかるのが国主導で決まったという点です。

地方自治体が選んだわけではありません。

結果として、税収減の影響だけを地方が受け止める形になりました。

たとえるなら、家計を支えてきた柱の収入を突然減らされるようなものです。

そして「今年分は補助金を出すから何とかして」と言われている状態。

翌年以降の収入がどうなるのかは、まだ見えていません。

これでは将来設計が立てられなくて当然でしょう。

 

ガソリン暫定税率廃止は、ドライバーにとっては確かな負担軽減策です。

その一方で、地方財政の安定性を揺るがす制度変更でもあります。

この前提を知っておくことが重要です。

それが、なぜ伊原木隆太知事が強い危機感を示したのかを読み解く、大切な手がかりになります。




伊原木隆太知事が勘弁してほしい理由とは

「勘弁してほしい。」

この率直すぎる一言が、多くの人の目に留まりました。

岡山県の伊原木隆太知事がこの言葉を口にしたのは、2026年2月4日の記者会見です。

感情に任せた発言、というよりも。

地方のトップとして、数字と現実を突きつけられた末の切実な危機感がにじんでいました。

 

知事が最も問題視したのは、暫定税率廃止による税収減に対する国の対応の不透明さです。

国は「減収分は特例交付金で補てんする」と説明しています。

この点自体は、報道でもはっきり伝えられています。

ただし、話はそこで終わりません。

「減収分と同額を交付すれば良いという簡単な問題ではない。」

この言葉に、問題の核心があります。

 

特例交付金は、あくまで2026年度「当面」の措置です。

翌年度以降、同じ水準で補てんされるのか。

それとも減るのか、終わるのか。

何も決まっていないのが実情です。

先が見えない財源。

 

自治体の予算編成は、1年先、2年先を見据えて行われます。

先が読めない財源を前提に、安定した行政運営を組み立てる。

それがどれほど難しいかは、想像に難くありません。

さらに知事は、「一方的に(財源を)奪われた形になっている。」とも述べました。

国が決めた政策で地方の収入が減り、その後のやりくりは地方任せ。

この構図に対する強い違和感が、言葉の端々から伝わってきます。

 

実際、岡山県の2026年度当初予算は楽観できる状況ではありません。

歳入見込みは約8,125億円。

一方で、各部局からの予算要求は約8,195億円に達しました。

差し引き70億円の不足。

要求ベースでは、これで12年連続のマイナスです。

 

この不足分は、財政調整基金で対応する方針です。

いわば県の貯金を取り崩す形になります。

ただし、貯金は無限ではありません。

「この先も同じ対応を続けられるのか」

そんな不安が、数字を伴って現実味を帯びてきます。

 

伊原木知事の「勘弁してほしい」という言葉。

それは、地方の現場で実際に数字と向き合う立場だからこそ出てきた、軽くないメッセージです。

次の見出しでは、この問題が岡山県だけの話ではなく、地方財政全体にどんな影響を及ぼしていくのかを見ていきます。

そこをもう一段、掘り下げていきましょう。




ガソリン暫定税率廃止が地方財政に与える影響

ガソリン暫定税率廃止の影響は、岡山県だけの話ではありません。

むしろ本質は、全国の地方自治体が共通して抱える構造的な問題にあります。

地方自治体の財政は、地方税、地方交付税、譲与税などを組み合わせて成り立っています。

このバランスが崩れても、すぐに目立った混乱が起きるとは限りません。

ただし、行政運営の足腰は確実に弱っていきます。

じわじわ効いてくる。

まるでボディブローのような影響です。

 

例えば、道路や橋の補修があります。

「今年は何とか持つから、来年に回そう。」

そんな判断が積み重なると、数年後に一気に大規模修繕が必要になることもあります。

防災対策や老朽化対策は後回しにされやすい分、

結果的により大きな負担となって跳ね返ってきます。

さらに地方は、人口減少と高齢化という避けられない現実を抱えています。

社会保障関連費は自然に増え、自由に使える予算は縮んでいきます。

そこに、安定しない財源問題が重なります。

厳しい選択の連続。

 

「何を守り、何を削るのか」

そんな判断を迫られる場面は、今後ますます増えていくでしょう。

ここで見逃せないのが、2026年度は特例交付金で対応するものの、恒久的な代替財源は未定という点です。

特例交付金は、当面の穴埋めにはなります。

しかし、それが将来にわたって使える財源かどうかは分かりません。

この先の見えなさこそが、地方にとって最大の不安材料です。

 

では、この問題は私たちの生活にどう影響するのでしょうか。

明日から急に何かが変わるわけではありません。

税金が一斉に上がるわけでも、行政サービスが止まるわけでもない。

ただ、

「対応が以前より遅くなった」

「新しい取り組みがなかなか始まらない」

そんな小さな違和感として、少しずつ表に出てくる可能性があります。

ガソリン代が下がること自体は、多くの人にとってありがたい話です。

けれど、その裏で地域を支える財政の土台が弱れば、

暮らしの安心感が静かに削られていくかもしれません。

 

短期的な負担軽減と、長期的な地域の安定。

このバランスをどう取るのかが、いま問われています。

伊原木隆太知事の発言は、単なる不満表明ではありません。

地方から国への、現場に根ざした問題提起です。

ガソリン暫定税率廃止をきっかけに、地方財政のあり方そのものが改めて注目される局面に入りました。

そう言っても、大げさではないでしょう。




まとめ

ガソリン暫定税率廃止は、私たちの負担を軽くする一方で、

地方の現場には見えにくい影響を静かに及ぼしています。

岡山県の伊原木隆太知事が示した強い問題意識。

それは、決して一つの自治体だけの事情ではありません。

 

全国の地方が抱える共通の課題を、そのまま映し出しています。

目先の変化だけを見れば、政策の評価はシンプルです。

ガソリン代が下がる。

家計が助かる。

それだけで話を終わらせることもできるでしょう。

けれど、その裏側で何が動いているのか。

どんな調整が行われ、

どんな選択が地方に迫られているのか。

そこに目を向けると、見え方は大きく変わってきます。

 

今回の議論は、単なる税や財政の話ではありません。

私たちの暮らしを、

そして地域の将来を、

誰が、どのように支えていくのか

その問いを突きつける、重要なきっかけになっているはずです。

ABOUT ME
to-chan
元介護施設職員、現ブロガー、雨を愛する人 自動車好き、読書、光輝くもの好き 座右の銘:朱に交われば赤くなる 好きな四字熟語:一期一会