2026年春、嵐ファン15万人の熱狂が札幌を包み込む。
華やかなステージの裏で、静かにその余波を受けている人たちがいます。
それが、ちょうど同じ時期に北海道大学を受験する全国の高校生たちです。
一見すると、エンタメと入試なんて全く関係なさそうですよね。
でも実は、「ライブ」と「受験」が交差するその場所に、見過ごせない現実があるんです。
コンサートによって膨れ上がる宿泊と交通の需要。
その影響で、ホテルが満室になったり、飛行機のチケットが取れなかったり。
ただでさえ緊張のピークにいる受験生にとっては、これが大きな負担になります。
札幌という一都市に、同時期に起きたふたつの大きな動き。
それが生んだのは、「イベント経済」と「教育の公平性」がぶつかり合う、ちょっと複雑な現場です。
この状況の中で、本当に守るべきものは何なのか?
私たちは、その問いにきちんと向き合えているでしょうか。
嵐ツアーと北大入試が接近!
2025年11月。
嵐が発表したラストツアー「ARASHI LIVE TOUR 2026 “We are ARASHI”」に、日本中のファンが歓喜しました。
ですがその一方で、ある“衝突”がひっそりと浮かび上がってきています。
それが、札幌公演と北海道大学の後期入試がほぼ同時期にぶつかる問題です。
まず、嵐の札幌公演は2026年3月13日から15日の3日間。
会場は「大和ハウスプレミストドーム(旧・札幌ドーム)」。
長年親しまれた場所が、新たな名前でラストツアーの幕開けを迎えるということで、注目度は桁違い。
最大で15万人が札幌に集まると予測されています。
一方、北海道大学の後期入試はその直前、3月12日(木)朝9時10分から。
道外からも多数の受験生が集まる北大。
当然、前日である3月11日には多くの高校生が札幌に到着しているでしょう。
「1日ずれてるなら大丈夫なんじゃない?」と思うかもしれません。
でも、話はそんなに単純じゃないんです。
嵐ファンもライブ前日に札幌入りするケースが多く、受験生とファンの“前泊”タイミングが丸かぶりする形に。
ホテルの争奪戦は必至。
SNSでもすでにこの日程問題が取り沙汰され、「嵐が日程を変えるべきだった」「受験生の宿がないのはおかしい」といった意見が飛び交っています。
中には「憶測で混乱しているだけ」という冷静な声もありますが、不安が広がっているのは事実です。
しかも、札幌は3月でも雪が多く、交通が乱れやすい季節。
受験生にとっては「宿がない」「交通が高くて混雑」「雪で遅延」——という、まさに三重苦のリスクに直面するかもしれません。
一方、嵐ファンにとってもこのラストツアーは5年ぶりの復活公演。
ようやく掴んだチケットを手に、札幌へ向かう人たちにとってもこれは人生に一度の大イベントです。
誰かが悪いわけじゃない。
でも、大規模イベントが同時に重なると、こうした見えにくい衝突が起きる。
だからこそ、事前の対策や配慮がどれだけ大事か。
それが今、あらためて問われているように思います。
「まさか、こんなに早く動かないといけないなんて——」
そんな後悔をしないために、今この段階でこの問題に気づけるかどうか。
それが、最初の一歩になるかもしれません。
札幌がパンク寸前の理由とは
「嵐の札幌公演と北大入試がかぶるらしいよ」
そんな噂が飛び交いはじめたのは、2025年11月22日。
ラストツアーの開催日が公式Xで発表された直後、SNSでは早くも“宿泊難民”の心配が広がり始めました。
正直、「ちょっと日程が近いくらいで、そんなに騒ぐ?」と思いたくなりますよね。
でも、ここに隠れていたのは、とんでもない“数字”のインパクトでした。
嵐の札幌公演は、3日間で最大15万人の来場者が予想されています。
1日あたりにすると、約5万人が札幌に押し寄せる計算。
一方、札幌市内にある宿泊施設は約400軒、定員にしてせいぜい8万人程度。
この時点で、もうキャパオーバーは目に見えている状態です。
さらに深刻なのが、予約スピードと料金の高騰。
ツアー発表からわずか12時間で、札幌駅周辺のホテルは軒並み満室に。
すすきのの大型ビジネスホテル(400室)も、3月13〜15日すべて埋まったとの報告が相次ぎました。
しかも問題は「本番日」だけじゃない。
ファンが前日入りする「3月12日」も含め、“前泊バトル”が激化していて、ちょうどその日が北大後期入試の前日なんです。
そして衝撃なのが宿泊料金の急騰。
通常1泊7,800円のホテルが、なんと5万2,000円に跳ね上がった例も。
中には1泊11万円超えという部屋まで出現し、まさに“札幌プレミア価格”と化しています。
交通費も例外ではありません。
東京(成田)〜札幌(新千歳)の航空券が、通常4,000〜6,000円のところ、公演前後ではなんと3万9,000円に高騰。
ホテル代と合わせて、1人あたり10万円超えの出費も現実味を帯びています。
しかも3月の札幌といえば、雪の季節。
飛行機や列車の遅延・欠航も珍しくなく、「いつ着けるか分からない」という不安もついて回ります。
受験生にとってはこれ、完全に試練の札幌。
キャンセル待ちに賭ける人も多いですが、嵐のチケット当落発表が1月ごろと見られており、「行けるか分からないけど予約だけする」という“仮押さえラッシュ”が混乱をさらに加速させている状況です。
特に打撃を受けるのが、地方から北大後期を受験しに来る学生たち。
「宿が取れない」「あっても劣悪な安宿しかない」というケースが出てくる可能性は高いです。
しかも、後期試験は前期に落ちた受験生にとって“最後の砦”。
宿泊・移動のストレスが試験に影響しないわけがありません。
ここで大きな問題になるのが、情報を早く得た人だけが得をし、出遅れた人が不利になる構造。
これはもう、情報格差や経済力の違いによって生まれる“不公平”といってもいい。
もちろん、嵐ファンが悪いわけではありません。
受験生がわがままを言っているわけでもありません。
どちらも、大切なイベントを控えた人たちです。
問題なのは、その舞台となる札幌という都市のキャパシティが追いついていないこと。
こうした大規模イベントと入試が重なれば、混乱が起きるのは当然の流れなのです。
これからの時代、イベント主催者・行政・教育機関の間で、事前の連携と調整がどれだけ重要か。
札幌のこの“限界”が、それを突きつけているように思えてなりません。
宿泊トラブルと今後の対策
嵐のラストツアーと北大後期入試がわずか数日違いで重なる——。
その影響で、札幌の宿泊事情が深刻な局面にあることは、これまでお伝えしてきた通りです。
では、この事態に対して関係者はどんな動きを見せているのでしょうか?
そして、受験生・保護者・ファン、それぞれが今できることとは?
まず、大きな役割を担っているのが北海道大学とその生協です。
嵐のツアー発表後、北大生協は迅速に対応を開始。
受験生向けの「受験宿泊・フライトパック」を案内し、受験票PDFの提出を条件に専用宿泊枠の確保ができる仕組みを整えました。
これは、いわば“受験生専用レーン”。
一般予約に巻き込まれる前に宿を押さえられるため、すでに多くの受験関係者が注目しています。
行政も動き始めています。
札幌市の秋元克広市長は、「受験生が困らないようホテル業界に協力要請を検討している」とコメント。
行政から宿泊業者に働きかけるのは異例の対応ですが、受験生用の追加枠確保や価格の安定化につながる可能性が期待されています。
さらに、国も動き出しました。
2025年12月2日、松本洋平文部科学相は「落ち着いて受験準備を進めてほしい」と述べ、大学・自治体と連携して情報提供を徹底する方針を明らかにしています。
国レベルで受験生の不利益を防ごうという動きが出てきたことは、大きな一歩です。
一方で、嵐の運営側からは今のところ日程変更などの発表はありません。
しかし、ファンのあいだでは少しずつ“思いやりの行動”が広がっています。
たとえば、SNSではこんな声も。
「受験生が宿を取りやすいよう、試験日の前後(3月11日〜12日)は避けて予約しよう」
こうした配慮は公式の指示ではないものの、静かな譲り合いのムーブメントとして根付きつつあるようです。
実はこのような“イベントと入試の衝突”は、過去にも繰り返されてきました。
2018年の福岡では、安室奈美恵とEXILEの公演が九州大学の入試と重なり、ホテル不足と高騰が問題に。
2023年の宮崎では、侍ジャパンの合宿と宮崎大学の入試が同時期となり、自治体が研修施設を代替宿として開放するなど現場での工夫が行われました。
つまり、今回の札幌も他人事ではない“全国的な課題”のひとつなのです。
では、受験生・保護者・ファンが今できることは何でしょうか。
まず、受験生側は北大生協の優先パックの活用を真剣に検討すべきです。
早期予約やキャンセル待ちの把握、親族宅や公共施設の活用、高速バスやフェリーといった代替手段も視野に入れる必要があります。
ファンの皆さんには、試験前後の日程を少しだけ避けて宿泊を計画するという配慮が、多くの受験生を救うことにつながります。
誰かの“人生がかかる一日”に、そっと席を譲るような、そんな優しさが今まさに求められています。
もちろん、こうした問題は理想論だけで解決するものではありません。
けれど、今この瞬間からでもできることはあります。
札幌に訪れるすべての人が、気持ちよくその一日を迎えられるように。
ほんの少しの“思いやり”が、最大のトラブル回避策になるのかもしれません。
まとめ
一つの都市に、**たくさんの想いが同時に押し寄せるとき**。
そこには、意図せずして生まれる**すれ違いや、見えない歪み**が潜んでいます。
嵐のラストツアーという、ファンにとっての**かけがえのない時間**。
そして、北大受験という、人生を左右する**大きな節目**。
どちらにも理由があり、どちらにも**譲れない想い**があります。
それは、比べるものではないし、どちらかが我慢すればいい話でもありません。
だからこそ、いま本当に必要なのは、**対立じゃなく“ほんの少しの配慮”と“情報の共有”**。
たったそれだけで、誰かの不安が軽くなったり、トラブルが未然に防げたりするのです。
札幌という街で、多くの人が迎えるそれぞれの特別な一日が、
**すべての人にとって“笑顔で終われる日”になるように**。
ほんの少しずつの思いやりが、きっとその景色をつくっていくはずです。