南鳥島レアアースで中国依存は脱却できる?日本の国産化への挑戦!
世界が静かに注目する、小さな孤島・・・南鳥島。
そこで発見されたのは、未来の産業を根底から支えるかもしれない、“日本の宝”とも言うべきレアアース資源でした。
資源の安定供給が不安定になるなか、
「中国への依存からどう抜け出すのか?」という問いは、もはや経済の話にとどまりません。
それは、安全保障の中枢にまで関わる、極めてシビアな問題へと広がっています。
では、南鳥島のレアアースは本当にその突破口となるのか。
国産化をめざす日本の挑戦、そしてその背後にある現実とは。
静かな海の向こうにある、希望と課題を掘り下げていきます。
南鳥島レアアースで中国依存脱却?
レアアース――それは、スマートフォンや電気自動車、風力発電など、今や生活の根幹に関わるハイテク製品に不可欠な素材です。
そんな重要資源をめぐり、日本は長年、中国への依存度の高さという構造的リスクを抱えてきました。
実際、世界のレアアース採掘量の約7割を中国が占めています。
さらに厄介なのが精錬・加工の問題です。
こちらは9割以上が中国依存というのが現状です(2025年USGS統計などによる)。
この「精錬」こそが、レアアース供給を左右する最大のカギ。
使える形にしなければ意味がない現実。
どれだけ地下に眠っていようと、精錬されなければ製品にはなりません。
言い換えれば、世界中がレアアースという資源の出口を中国に握られている構図なのです。
日本にとっても、それは決して他人事ではありません。
輸入レアアースの約7割を中国に依存している日本。
中でも重要な中・重希土類(ネオジム、ジスプロシウムなど)は、ほぼ100%中国頼みという実情があります。
しかも、こうした依存関係は過去に現実のリスクとして表面化しました。
記憶に残るのが、2010年の「レアアース・ショック」です。
外交問題をきっかけに、中国が日本向けレアアースの輸出を事実上ストップ。
一部の製造業では在庫が枯渇し、生産ラインに深刻な影響が出ました。
「あのときの冷や汗は、今も忘れられない」と話す関係者もいるほどです。
だからこそ今、日本国内でレアアースを確保できるかもしれないという希望が、改めて大きな注目を集めています。
その焦点となっているのが、東京都の最東端に浮かぶ孤島、南鳥島。
2013年、東京大学や海洋研究開発機構(JAMSTEC)などの調査により、南鳥島沖の海底から約1,600万トンものレアアースが確認されたと発表されました。
種類によって差はありますが、日本の消費量ベースで換算すれば数十年から数百年分。
世界全体の需要で見ても、数百年分に相当するといわれています。
まさに国産化の切り札と呼べる存在です。
「日本もついに資源大国の仲間入りか?」と胸を躍らせる声が上がるのも無理はありません。
とはいえ、資源が「ある」だけで、すぐに使えるわけではありません。
採掘、精錬、コスト、環境問題――乗り越えるべき壁は少なくないのです。
ここからが本当の勝負ではないでしょうか。
日本は今、レアアース国産化に向けてどのような挑戦を続けているのか。
そしてそれは、本当に現実のものとなり得るのでしょうか。
その舞台裏を、少し覗いてみましょう。
日本の国産化への挑戦とは
「レアアースを日本で確保できるかもしれない」。
その希望を、絵に描いた餅で終わらせないために。
日本は静かに、けれど着実に動き始めています。
中国依存からの脱却に向けた取り組みは、単なる掘る作業ではありません。
資源の国産化とは、採掘から搬送、そして実際に使える状態にするまでの全工程を自前で回すこと。
最初から最後まで国内で完結させる体制づくり。
つまり、部分的な対応では意味がありません。
採る・運ぶ・精錬するという一連の流れを日本国内で完結させることが求められているのです。
その中核を担っているのが、内閣府主導の戦略的イノベーション創造プログラム、いわゆるSIP。
2018年から始動し、東京大学や海洋研究開発機構(JAMSTEC)、民間企業などがタッグを組んで海底資源開発に挑んでいます。
南鳥島沖のレアアースを、環境に配慮しながら効率よく取り出すことが最大のミッションです。
とりわけ注目されているのが、泥を海水と混ぜてスラリー状にし、揚泥管を使って船まで引き上げる技術です。
エアリフト方式や閉鎖型循環方式によって泥を撹拌・軟化させ、安定した水流で連続的に揚げる仕組み。
従来の掘削法に比べて、コストと環境負荷を抑えられる点が大きな強みとされています。
2024年時点では、茨城沖の水深約2,500メートルの海域で試験に成功しました。
ただし、南鳥島沖のような超深海での本格採掘は、まだこれからです。
2026年初頭の現在、世界初となる深海での揚泥管接続試験に挑戦中とされています。
1日350トン規模のパイロット採掘が予定されているのは、2027年2月以降。
着実だが慎重な歩みと言えるでしょう。
「もう掘り出しているのでは?」と思う人もいるかもしれません。
しかし実際には、まだ本格採掘の一歩手前の段階です。
それでも、確実に前進しているのは間違いありません。
そして、もう一つ立ちはだかる大きな壁が「採ったあと」の精錬処理です。
泥の中からレアアースを実用レベルにまで高めるには、高度な精製技術と専用施設が不可欠。
そのため国内では、既存の製錬所を活用した技術実証が進められています。
加えて、使用済み製品からレアアースを回収する技術開発など、リサイクルと精錬の両面で体制整備が進行中です。
このように、南鳥島のレアアース開発は単なる資源の発見では終わりません。
採る・運ぶ・使える形にするという全工程を国内で回す挑戦こそが、本質なのです。
とはいえ、日本が目指しているのは完全な自給ではありません。
重要なのは、中国に過度に依存しない持続可能な供給体制を築くこと。
南鳥島のレアアースは、そのための切り札の一つにすぎません。
では、その切り札は本当に実用化できるのでしょうか。
次章では、南鳥島の資源化に立ちはだかる課題と可能性に迫っていきます。
南鳥島資源の可能性と課題
地政学リスクが日に日に高まるなか、世界が静かに視線を向けている場所があります。
それが、日本の南鳥島沖に眠る海底レアアース資源です。
一部の専門家からは、「資源地図を塗り替える発見になるかもしれない」との声も聞かれます。
その注目の的となっているのが、推定1,600万トンに及ぶレアアース泥。
この泥には、ディスプロシウムやテルビウムなど、電気自動車や風力発電に不可欠な重希土類も豊富に含まれているとされています。
報道によっては、その規模は世界第3位相当と表現されることもあります。
日本の年間需要ベースで見れば、数十年から数百年分に相当する計算です。
ただし、政府やJAMSTECは意図的に慎重な言い回しをしています。
使われる表現は、「産業的開発が可能な規模」。
過度な期待が先行しないよう、冷静な見極めが求められているのです。
とはいえ、この夢のポテンシャルを現実に変えるには、いくつもの高い壁を越えなければなりません。
まず立ちはだかるのが、水深約6,000メートルという超深海の環境です。
この深さでの商業採掘は、世界的にもほとんど実績がありません。
台風、強い海流、遠隔操作の難しさなど、どれもが予測不能で極めて過酷です。
2026年初頭の現在は、揚泥管を用いた世界初の深海接続・揚泥試験が始まった段階です。
2027年以降には、1日350トン規模の試掘が予定されています。
2028年には商業化の可否判断と一部実用化が視野に入ります。
2030年代に入れば、継続運用による本格化も見込まれています。
ただ、中国との価格競争や国際情勢を考えれば、「もっと早く」という声が上がるのも自然でしょう。
次なる課題は、コストと経済性です。
採掘から輸送、精錬、販売までの一貫体制を構築するには、初期投資だけで数百億円規模になると見られています。
中国産との価格競争では不利になる可能性も否定できません。
そのため、高付加価値な希少元素に絞った選択と集中の戦略が不可欠になるでしょう。
現実的なビジネスモデルが問われています。
さらに見逃せないのが、環境への影響です。
深海底の泥を吸い上げる行為が、海洋生態系にどのような影響を与えるのかは未知数。
そのためSIPプロジェクトでは、「江戸っ子1号COEDO」や環境DNAなどを活用し、生態系モニタリングを行いながら試験を進めています。
環境と資源開発の両立を目指す取り組みです。
そして、意外と大きな壁となるのが輸送と法制度の問題です。
南鳥島は東京から約1,950km離れた太平洋の孤島。
人や資材の輸送だけでなく、採掘機材や支援拠点の整備にも多大なコストと時間がかかります。
現在は、港湾インフラの整備や無人化技術、法制度の検討が並行して進められています。
実用化に向けた地ならしの段階です。
それでも日本は、こうした課題と正面から向き合いながら一歩ずつ前進しています。
一足飛びにはいかない。
けれど確実に、未来への種まきは始まっています。
国産レアアースという選択肢を、次世代へ手渡すために。
その挑戦は、すでに静かに動き出しているのです。
まとめ
南鳥島のレアアース開発は、単なる“資源の確保”にとどまりません。
それは、日本という国が、自立した未来を描くために踏み出した静かな一手でもあります。
もちろん、未知の領域に挑むにはリスクも困難もつきものです。
でも、その先には、これまで見えなかった可能性や、新しい価値の創出が待っているかもしれない。
地道な技術と知恵の積み重ね。
それがやがて、世界の流れすら変えていく力になるかもしれない。
そんな希望を、この静かな海の底は、今、そっと抱えているのです。