千葉県鴨川市で進められていた、ある再生可能エネルギー計画が、今、静かに転機を迎えています。

広大な山林を舞台に描かれたこの構想は、かつて一部で注目を集めたものの、地元では長年にわたり疑問や反発の声が絶えませんでした。

そして現在、ある制度の「期限切れ」、さらに「指摘された行為」によって、計画そのものの行方が揺らぎ始めています。

背後には、制度が抱える見落とされがちな盲点や、これまで表に出にくかった構造的な問題が横たわっていました。

本当に問われているのは、いったい何だったのか?

この転機をめぐる一連の動き、その全貌を追っていきます。




鴨川メガソーラーとは何か?

千葉県鴨川市の山林を舞台に進められてきた、大規模な再生可能エネルギー計画。

それが「鴨川メガソーラー」と呼ばれてきた事業です。

 

引用元: 佐々木俊尚 のX

計画の概要を見ていくと、その規模の大きさに驚かされます。

事業区域は約250ヘクタール。

そのうち約146ヘクタールを造成し、太陽光パネルを設置するという内容でした。

国内でも最大級クラスの太陽光発電施設といっていいでしょう。

 

予定されていた発電出力は約100メガワット(MW)。

数字だけでは分かりにくいかもしれません。

一般家庭およそ3万世帯分の電力をまかなえる規模と聞けば、イメージしやすいのではないでしょうか。

まさに超大型案件として、エネルギー業界でも注目を集めていました。

 

設置予定だった太陽光パネルの枚数は、約47万枚。

もはや個人の感覚では想像しきれない規模です。

山ひとつを覆い尽くす光景だったといわれています。

 

事業者はAS鴨川ソーラーパワー合同会社。

2026年1月現在でも、この名称で報道が続いています。

長期間にわたって計画が動いていたことが分かります。

 

この計画が大きく注目された理由のひとつが、FIT(固定価格買取制度)の存在でした。

同社がFIT認定を取得したのは2014年3月31日。

当時の売電価格は36円/kWh。

現在の水準と比べると、実に4倍以上の高値です。

 

つまり、事業が本格稼働すれば、非常に高い利益が見込める構造だったということ。

安定した収益が長期間保証される仕組み。

事業者にとっては魅力的な条件がそろっていました。

 

ただし、その利益の原資はどこから来るのでしょうか。

答えは、私たちが毎月の電気料金で支払っている「再エネ賦課金」です。

国民全体が負担する仕組み。

つまり目に見えない税金のようなものです。

ここに疑問を感じた人も少なくありません。

 

もうひとつ大きな注目点となったのが、環境への影響です。

開発予定地は急斜面を含む広大な山林。

大規模な造成が行われることで、さまざまな懸念が指摘されてきました。

 

土砂災害のリスク。

水源への悪影響。

森林の生態系破壊。

いずれも地域の暮らしに直結する問題です。

 

地元住民や市民団体からは、反対や疑問の声が繰り返し上がっていました。

安全性は本当に確保されるのか。

自然環境への影響は軽視されていないか。

そうした問いが投げかけられていたのです。

 

もちろん、再生可能エネルギーの推進は重要なテーマです。

脱炭素社会に向けて、太陽光発電が果たす役割は小さくありません。

しかし、それが自然破壊と引き換えに進められるとしたらどうでしょうか。

 

このプロジェクトは、私たちに重い問いを突きつけてきました。

環境にやさしいとは何か。

持続可能とはどういうことなのか。

考えさせられるテーマです。

 

引用元: 野口健 のX

そして現在、この計画はFIT認定の失効が正式に確定しています。

高額な売電価格という前提が崩れました。

事業としてのうま味が一気に失われた状況です。

 

事実上の頓挫といっていいでしょう。

かつては「未来の電源」として華々しく語られていた計画。

その幕は、いま静かに下ろされようとしています。



FIT失効と違法伐採の真相

鴨川メガソーラー計画が、事実上の頓挫へと進む決定打となった出来事。

それがFIT認定の失効でした。

 

「FITって何?」と感じる方もいるかもしれませんよね。

FITとは、固定価格買取制度(Feed-in Tariff)の略称。

再生可能エネルギーで発電された電気を、国が定めた価格で一定期間、電力会社が買い取る制度です。

安定した収益が見込めるため、再エネ事業者にとってはまさに生命線ともいえる制度です。

 

鴨川メガソーラーでは、2014年3月31日にFIT認定を取得。

その売電価格は、1kWhあたり36円でした。

2026年度時点の水準である約8.6円/kWhと比べると、実に4倍以上。

破格としか言いようのない条件だったのです。

 

引用元:共同通信公式X

つまり、このFIT認定を維持できるかどうか。

それが事業の収支を根底から左右する、最大のカギだったといえるでしょう。

計画の成否を分ける核心部分。

 

ただし、FIT制度には明確なルールがあります。

認定を受けたあと、定められた期限までに運転を開始しなければならない仕組み。

期限を過ぎれば、認定は自動的に失効します。

 

鴨川メガソーラーに課されていた運転開始期限は、2023年3月末。

しかし、この期日を過ぎても稼働には至りませんでした。

延長申請は行われたものの、必要な条件を満たしていなかったとみられています。

 

そして2026年1月9日。

資源エネルギー庁がFIT認定の失効を確認し、千葉県へ通知。

同日、熊谷俊人知事が会見で公表しました。

 

引用元:Blackoo!のX

つまり、形式上の発表は2026年ですが。

実際には2023年4月1日の時点で、すでにFIT認定は失効していたということ。

この事実に、ネット上ではさまざまな反応が広がりました。

 

「やっと取り消されたか」という声。

「森林破壊に天罰だ」という辛辣な意見。

一方で、「なぜ失効処理に2年もかかったのか」と、制度運用の遅さを疑問視する声も噴出しています。

 

しかし、問題はFIT失効だけでは終わりませんでした。

さらに深刻な事態が明らかになったのです。

それが違法伐採

 

2025年、千葉県の調査によって事実が判明しました。

開発許可を得ていない区域で、約2.4ヘクタール。

しかも13カ所にわたって森林が伐採されていたのです。

 

これは、森林法に明確に違反する行為。

県は直ちに工事の一時中止を求める行政指導を実施しました。

さらに、伐採された森林の原状回復命令も出されています。

 

この違法伐採、「知らなかった」では済まされません。

山林開発は、地形や水源、土砂災害リスクと直結する行為。

だからこそ、慎重で厳密な手続きが求められるのは当然です。

 

実際、地元では不安の声が相次いでいました。

「水が濁った」という指摘。

「山が崩れるのではないか」という恐怖。

住民による反対運動も、次第に活発化していったのです。

 

高額な売電権利を守るために、無理な開発を強行したのではないか。

そんな疑念が広がるのも、無理はないでしょう。

この時点で、事業への信頼は完全に揺らいでしまいました

 

FIT認定の失効。

違法伐採の発覚。

行政指導という現実。

 

これらが複雑に絡み合い、鴨川メガソーラー計画は今。

もはや後戻りできない、抜き差しならない局面に追い込まれています。




計画中止の可能性と今後は?

では、鴨川メガソーラー計画はこのまま中止になるのでしょうか。

多くの人が、いま最も気になっている点かもしれません。

 

結論から言えば、事業の継続は極めて困難な状況にあります。

最大の理由は、これまで前提とされてきた「高額売電モデル」そのものが成立しなくなったこと。

ここが致命的です。

 

この計画は、FIT制度によって36円/kWhという非常に高い売電価格が保証されていました。

しかし、2023年3月末の運転開始期限を超過。

そして2026年1月、FIT認定の失効が正式に確認されました。

これにより、36円での売電は完全に不可能となったのです。

 

現在のFIT価格は、2026年度基準でおよそ8.6円/kWh。

単純計算でも、売電単価は4分の1以下。

この差が、事業収支に与える影響は決定的といえるでしょう。

 

仮にあらためてFITを申請したとしても。

かつて想定されていたような利益は、もはや期待できません。

採算性の前提が根本から崩れた状態。

 

さらに追い打ちをかけるのが、国のエネルギー政策の方向性です。

政府は、2027年度以降、メガソーラーへの上乗せ支援を廃止する方針を示しています。

特に山林を切り開く大規模造成型の太陽光発電は、今後ますます厳しい立場に置かれると見られています。

 

経済性の問題だけではありません。

地元住民や市民団体からの強い反対も、いまだ続いています。

 

「鴨川の山と川と海を守る会」をはじめとする団体は。

計画の見直し、そして中止を求め、長年にわたり声を上げてきました。

違法伐採や自然破壊の問題が重なったことで、事業者への信頼は失墜。

現在では、ほぼゼロに近い状態といっても過言ではありません。

 

こうした背景から、今後の焦点は事業者がどう動くのかに移っています。

現在、千葉県は事業者に対し。

事業継続の意思や資金計画などの提出を要請しています。

いわば、「回答待ち」の状態です。

 

一部では、「このまま撤退するのではないか」という見方も広がっています。

FIT失効によって、事業の魅力は大きく低下。

事業を続けるインセンティブが著しく弱まっているのが実情です。

 

そして、地元で特に懸念されているのが。

もし会社が解散した場合、違法伐採地の復旧責任はどうなるのかという問題。

現実的で、切実な不安です。

 

ただし、完全な放棄がすでに決まったわけではありません。

動きが全く止まっているわけでもないのです。

 

実際、違法伐採が確認された13カ所、約2.4ヘクタールのうち。

4カ所、約1800平方メートルについては。

すでに千葉県が復旧計画を承認しています。

早ければ、今月中にも撤去作業が始まる見通しとされています。

 

とはいえ、残るエリアを含め。

復旧がどこまで、どのように進むのかは依然として不透明です。

全体像が見えてくるまでには、まだ時間がかかるでしょう。

 

このように、今後の展開は事業者の判断に大きく左右されます。



まとめ

かつて大きな期待を背負って始まったエネルギー計画が、いま静かに足元から問い直されています。

制度の“期限”。
自然との向き合い方。
そして、地域の声。

本来であれば、どれも無視できないはずの要素でした。
けれど、計画が走り出す中で、いつの間にかどこか脇に置かれていたのかもしれません。

「進めること」だけが正解ではなかった。
そんな気づきを突きつけられたのが、今回の出来事です。

立ち止まること、見直すこと。
その意味が、むしろ今だからこそ強く浮き彫りになった気がします。

再生可能エネルギーという言葉の重み。
それすらも、いま一度、静かに問い直されているのです。

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to-chan
元介護施設職員、現ブロガー、雨を愛する人 自動車好き、読書、光輝くもの好き 座右の銘:朱に交われば赤くなる 好きな四字熟語:一期一会