高級会員制サウナとして話題を集めていた「SAUNATIGER」で、突然の火災が発生しました。

燃えたのは、わずか数㎡の小さな個室空間。

そこで命を落としたのは、ただリラックスしたくて訪れていた夫婦だったのです。

一見、“小規模な火災”

けれど、なぜ彼らは逃げることができなかったのか。

その理由を追っていくと、見えてきたのは――

構造に潜んだ見過ごされてきた落とし穴

そして、「安全だと思っていた」という無意識の思い込み

赤坂で起きたこのサウナ火災の真相に近づくほど、
それは、あなたが今 通っている施設にも無関係じゃないと気づかされます。




SAUNATIGERの設備不備5つ

高級会員制個室サウナとして注目を集めていた「SAUNATIGER(サウナタイガー)」。

しかし、2025年12月。

夫婦2人が命を落とすという痛ましい火災事故が起き、そこから浮かび上がったのは、あまりにも多くの“人災”でした。

 

火の手は、ほんのわずか。

タオルと木材の一部が焦げた程度でした。

それなのに――命を奪った原因は、信じられない5つの設備不備だったのです

 

1. 両側からドアノブが外れるという致命的な構造

個室内のドアノブが、内と外の両方から外れていた。

そして、床に転がっていた。

 

しかも、連動すべきラッチボルトも機能せず、ドアは完全に開かない状態だったというのです。

使われていたのは木製のL字型ドアノブ。

専門家によれば、サウナのような高温多湿の環境には不向きで、劣化しやすい素材とのこと。

 

さらに、過去には別室でもドアノブの不具合が起きていた記録もありました。

つまり、危険性は以前から見えていた可能性が高いのです

この構造的欠陥こそ、逃げ道を完全に奪った最大の要因でした。

 

2. 非常ボタンが“飾り”だった

個室内には非常ボタンが設置されていたはず。

ですが、連動先の受信機の電源が約2年間も入っていなかったという、信じがたい証言がオーナーから飛び出します。

 

現場確認では、ボタンのカバーが外れ、破損していたことも判明。

つまり、必死に助けを呼ぼうと押された可能性が非常に高いのです。

 

けれど、その叫びは一切届かなかった。

“非常ボタンがあったのに、助けは来なかった”――人災の証拠。

この事実が、人災であることを物語っています。

 

3. 室内の異常が外から見えない設計

火災に最初に気づいたのは、個室の外にあった煙感知器の作動。

逆にいえば、室内で何が起きているのか、外部からは完全に見えなかったということ。

 

密閉空間の中で、異変が察知されない構造。

これは、設計上の安全対策としての致命的な欠陥です

 

4. ガラスを割っても逃げられない現実

ドアには小さなガラス窓がありました。

しかし、そこから脱出することは叶わなかった。

 

調査では、ガラスに叩いた跡やこすれが確認され、被害者の手にも皮下出血。

さらに、サウナストーンをタオルで包み、打ちつけた形跡もあったといいます。

 

それでも、割れなかった。

最後の希望すら届かなかったという現実が、ただただ重くのしかかります。

 

5. 法の網をすり抜けた設備管理の“死角”

赤坂区保健所の点検では、非常ボタンやドアノブはそもそも検査項目に含まれていなかったことが判明。

港区条例には、個室サウナへの非常ボタン設置義務が明記されておらず、法制度としての“穴”が存在していたのです。

 

SAUNATIGERは2022年に旅館業許可を取得し、設備変更の届け出も出していました。

それでも、肝心な安全管理の中身は誰も見ていなかった。

制度の甘さが、命を守る最後の網を壊してしまった――そう言わざるを得ません。

 

火の手そのものは、ほんの小さなものでした。

それでも、人が逃げられない構造が揃っていたがゆえに、命は簡単に奪われてしまったのです。

 

見た目の“高級感”とは裏腹に、基本的な安全管理がすっぽり抜け落ちていた。

次の見出しでは、なぜこのような状況で、夫婦が脱出できなかったのか――さらに深く掘り下げていきます。




密室で死亡した原因と今後

焼損面積はごくわずか。

それでも、夫婦2人が命を落とした――。

 

多くの人が感じた疑問は、やはりここでしょう。

「なぜ逃げられなかったのか?」

その問いにこそ、赤坂サウナ火災の本質が詰まっています

 

“炎”ではなく、“密室と高温”が命を奪った可能性

火は天井まで回っておらず、煙も大量に充満していたわけではありません。

それでも、個室サウナ内で夫婦は入り口付近に倒れたまま亡くなっていたのです。

 

司法解剖の結果、死因は「不詳」。

ただし、報道によれば高体温症や一酸化炭素中毒(焼死を含む)の可能性が高いと見られています。

 

ここが、非常に重要なポイント。

つまり、直接的な火傷ではなく、環境によって追い詰められた結果だったということ。

 

サウナという空間は、もともと極めて高温。

そこに火災による熱と煙が加われば、体は一気に限界へと達します。

 

体温が急上昇すると、人は正常な判断力を失い、立ち上がることすら困難になる。

「逃げなきゃ」と思っても、もはや体が動かない。

その恐怖の中で、時間だけが過ぎていった――そんな可能性があるのです。

 

複数の構造的トラップが同時に牙をむいた

この事故を「小火による不幸な事故」と片付けてしまうのは、あまりに浅はかでしょう。

 

実際には、いくつもの“逃げ道”が同時に塞がれた結果の密室死でした。

 

高湿に不向きな木製ドアノブが後付けされ、劣化していた可能性。

ドアノブと連動するラッチボルトが作動不良。

押された痕跡がありながら、機能しなかった非常ボタン。

室内の異常が外から把握できない密閉構造。

割れなかったガラス窓と、そこに残る手の皮下出血の跡。

 

これらのうち、どれか一つでも正常に機能していれば――結果は違っていたかもしれません。

でも、実際にはすべてが同時に壊れていた

だから、逃げられなかった。

 

その“複合的な閉じ込め”。

それこそが、最大の死因といえます。

 

「合法=安全」という思い込みの崩壊

SAUNATIGERは旅館業の営業許可を取得していました。

それ自体に、何の違法性もありません。

 

けれど、港区の条例には個室サウナへの非常ボタン義務が記載されておらず、保健所の検査でもドアノブや緊急設備は点検対象外。

つまり、「合法ではあった」が、命を守るには不十分だったということ。

 

“許可がある”から安心。

“高級”だから安全。

多くの人が、無意識に信じているこの心理。

その危うさを、この事故は容赦なく突きつけています。

 

この事故が突きつけたもの

赤坂サウナ火災は、今、業界全体に問いを投げかけています。

 

特に注目されているのが、密閉型・高温型の個室サウナにおける脱出手段や監視体制の在り方。

現時点で法改正や業界基準の見直しが決まったわけではありません。

けれど、この事故が決して見過ごせない“警鐘”であることは、もはや誰の目にも明らかです。

 

日常のストレスから解放されるはずの癒やしの空間が、一瞬で命を奪う密室に変わる現実。

この悲劇は、利用者一人ひとりにも、「何を基準に安全を信じるのか」を問いかけています。

 

次の見出しでは、赤坂サウナ火災の全体像をもう一度振り返りながら、なぜここまで注目を集めたのか――その背景に迫っていきます。




赤坂サウナ火災の概要

2025年12月15日、東京都港区赤坂の完全会員制サウナ「SAUNATIGER」で、わずか400平方センチという小さな火災が発生しました。

しかしその火によって、利用中だった夫婦2人が命を落とすという、極めて衝撃的な事故となったのです。

 

事故の発生と被害者

火災が起きたのは、平日の正午ごろでした。

犠牲となったのは、美容室を経営していた松田政也さん(36)と、妻の陽子さん(37)。

 

2人は予約していた個室サウナを利用中に異変に見舞われ、入り口付近で折り重なるように倒れていたといいます。

消防が現場に駆けつけましたが、搬送先の病院で死亡が確認されました。

 

出火原因と謎の火種

火元は、サウナストーンに接触したタオルとみられています。

室内の焼損は一部に限られており、火災の規模自体は非常に小さなものでした。

 

ただし、意図的に火を起こして助けを呼ぼうとした可能性も一部で指摘されています。

偶発的な出火だったのか、それとも切迫した行動だったのか。

この点については、現在も捜査が続けられています。

 

逃げられなかった密室の構造

室内には非常ボタンが設置されていました。

しかし、連動先の受信装置の電源が約2年にわたって切れていたことが、後に判明します。

 

助けを求めた痕跡はあったものの、そのSOSは外部に届きませんでした。

異変に気づいたのは、個室の外に設置されていた煙感知器の作動。

その通報によって消防が出動しましたが、到着時にはすでに個室内は完全に閉じ込められた状態でした。

 

内側と外側、両方のドアノブは外れており、ドアは開かない。

脱出は不可能な状況だったとされています。

ガラス窓を割ろうとした痕跡も確認されましたが、間に合わなかったのです。

 

“高級”という幻想とズサンな管理

SAUNATIGERは、1回1万9000円から利用できるラグジュアリーな個室サウナでした。

月額39万円のVIPプランも用意され、SNSでも注目を集めていた人気施設。

 

ところが、事故後になって次々と明らかになったのは、ずさんな安全管理の実態でした。

過去に別室でドアノブの不具合が起きていたこと。

非常ボタンの受信機の電源が、2年も入っていなかったというオーナーの証言。

 

「高級=安全」という思い込みは、完全に崩れ去ったといえるでしょう。

 

なぜ、これほど社会的な関心を集めたのか。

この事故が注目された理由は、単に火災で死者が出たからではありません。

 

ごく小さな火災で命が奪われたという衝撃。

密室構造の中で、一切の逃げ道が絶たれていたという恐怖。

表向きの“高級さ”の裏にあった、制度でも見抜けなかった安全管理の穴。

 

さらに、「自分が同じ立場だったらどうなっていたのか」という共感と不安が広がったことも、世間の関心を大きくした要因です。

 

赤坂サウナ火災は、単なる火災事故ではありません。

個室サウナという業態が抱える構造的リスク。

そして、「安全とは何か?」を改めて問い直すための、象徴的な事件となっています。




まとめ

日常の延長にある“特別な空間”が、思いがけず命を奪う場所になる――。

赤坂で起きた個室サウナ火災は、目に見えないリスクがどれほど深刻な結末を生むのかを、私たちに突きつけました。

「高級」「快適」といった言葉の奥に隠れていた盲点。

「安全対策は整っているはず」という、思い込みの危うさ

そこにこそ、この事故の根があるのかもしれません。

問われているのは、施設の管理体制だけではないのです。

“当たり前に信じている安心”に対して、私たち自身がどれだけ無防備だったか

見た目の華やかさやブランド感に安心を委ねるのではなく、
目に見えない部分に、どんなリスクが潜んでいるかを見抜く力が、いま本当に求められているのではないでしょうか。

ABOUT ME
to-chan
元介護施設職員、現ブロガー、雨を愛する人 自動車好き、読書、光輝くもの好き 座右の銘:朱に交われば赤くなる 好きな四字熟語:一期一会