次世代太陽電池の開発は国産!?課題は電池の耐久性のみか!

 

ペロブスカイト太陽電池
引用元:筑波大学 (太陽光パネルが進化しています!)
次世代の太陽光発電技術として大きな注目を集めています、

次世代太陽電池の「ペロブスカイト太陽電池」です。

従来のシリコン系太陽電池に比べて薄く、軽く、曲げられるといった特徴を持ち、

これまで太陽光パネルの設置が難しかった場所への応用も期待されています。

日本発の技術シーズであり、主材料の一つに日本が産出するヨウ素が使える点も強みです。

この記事では、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた現在の開発状況、

具体的な実用化の時期、そして克服すべき5つの主要な課題とコストについて、詳しく解説していきます。

次世代太陽電池:ペロブスカイト太陽電池の実用化はいつ頃?

実用化の例
引用元:Aisin
ペロブスカイト太陽電池の実用化は、開発中なので段階的に進むと予測されています。

初期の商用化・小規模実用化

2025年頃から、一部の企業が産業向けやオフィスビル向けに

ペロブスカイト太陽電池の商業化を本格的に開始すると見込まれています。

積水化学工業は2025年の事業化を明言しており、東芝やパナソニックといった大手企業も

2025年から2026年にかけて量産を開始するとの見立てがあります。

既に国内外で実証実験も活発に行われており、

パナソニックはガラス一体型ペロブスカイト太陽電池の実証実験を2023年から開始しています。

量産体制の構築と本格的な普及

各メーカーによる本格的な量産開始時期は、早ければ2028年頃と予測されています。

日本政府もペロブスカイト太陽電池の普及を後押ししており、

経済産業省は2030年までにGW(ギガワット)級の量産体制構築を目指す方針を示しています。

一般家庭への普及については、現時点では2028年から2030年頃との予想もありますが、

明確な根拠はまだないとされています。

まずは公共施設や企業ビルなどへの導入から進み、技術的課題の解決やコストダウンが進んだ後、

2030年から2040年頃に本格的な実用化と社会実装が進むという見方もあります。

そうなると、屋根の太陽光パネルが軽くなったり、自動車も充電せずに走れる未来が広がりそうですね。

国による実用化支援の動き

日本政府もペロブスカイト太陽電池の早期社会実装を目指し、支援を強化しています。

経済産業省は、次世代太陽電池の量産技術確立のため、関連予算を498億円から648億円に増額しました。

この予算は、多様な利用形態での実証、技術基盤の開発支援、

大型化・耐久性向上に向けた開発支援などに充てられます。

また、環境省も「窓・壁等と一体となった太陽光発電の導入加速化支援事業」などで

補助金制度を設け、自家消費型や地産地消型の導入を促進しています。

お兄さん
お兄さん
地産地消となるとコストも下がるね!

窓に太陽光パネル

引用元:NEDO グリーンイノベーション基金 (窓が太陽光パネルになっているイメージ)

実用化への道のり:ペロブスカイト太陽電池が抱える5つの課題

大きな可能性を秘めるペロブスカイト太陽電池ですが、

本格的な普及に向けてはいくつかの課題を克服する必要があります。

ここでは主要な5つの課題について解説します。

ペロブスカイト層
引用元:日本精化株式会社
1・耐久性と寿命の壁 ~長く安定して使えるか?~

ペロブスカイト太陽電池の大きな課題の一つが耐久性です。

ペロブスカイト結晶は、空気中の水分や酸素、紫外線、温度変化などの

外部環境の影響を受けやすく、劣化しやすい性質を持っています。

特に湿気に弱く、ペロブスカイト層が分解して発電効率が低下する可能性があります。

寿命については、開発当初は5年程度とされていましたが、研究開発が進み、

現在では10年程度の耐久性を持つものも報告されています。

しかし、一般的に20年以上の寿命が期待される

従来のシリコン太陽電池と比較すると、まだ短いのが現状です。

この課題解決のため、積水化学工業や東芝は特殊な保護膜技術を開発し、

湿気や酸素からペロブスカイト層を保護することで耐久性向上を目指しています。

また、パナソニックホールディングスは封止技術の改良に取り組んでいます。

材料自体の耐性を高める研究も進められています。

2・含有物質の安全性 ~環境への配慮は?~

ペロブスカイト太陽電池の材料には、鉛(ヨウ化鉛など)が含まれていることが課題として指摘されています。

鉛は人体や環境に対して有害性を持つ物質であるため、

製品の製造から廃棄までのライフサイクル全体での適切な管理や、

破損時の流出リスク対策が求められます。

この問題に対し、鉛を使用しない「鉛フリー」のペロブスカイト材料の研究開発も進められています。

しかし現時点では鉛を含むタイプに比べて発電効率などの性能面で課題が残ることが多く、

さらなる技術革新が期待されています。

3・大型化と量産技術の確立 ~安定供給は可能か?~

実験室レベルでは高い発電効率が確認されているペロブスカイト太陽電池ですが、

広い面積で均一な品質の膜を安定して製造する技術(大型化)と、

それを効率よく大量生産する技術(量産化)の確立が大きな課題となっています。

太陽電池の性能は、ペロブスカイト層の結晶構造や膜の均一性に大きく左右されるため、

大面積化する際にはこの均一性を保つことが難しくなります。

また、産業レベルでの量産には、一貫した品質の確保と高い生産効率が求められます。

この課題に対し、経済産業省は「次世代型太陽電池実用化事業」を立ち上げ、

塗布工程や電極形成、封止工程といった各製造プロセスの要素技術確立に向けた研究開発を支援しています。

また、産業技術総合研究所(産総研)は、

世界初となるペロブスカイト太陽電池の自動作製システムを開発し、

研究開発の効率化と高性能化に貢献しています。

4・コストの壁 ~本当に安くなるのか?~

ペロブスカイト太陽電池は、将来的に大幅なコストダウンが期待されていますが、

現状では開発段階であり、量産体制も整っていないため、

一部の試作品などは高価になる場合があります。

また、正孔輸送層や金属電極に高価な貴金属や有機材料が用いられたり、

特殊な製造環境(クリーンルームや低湿度のドライルームなど)が必要な場合、

設備コストやプロセスコストが上昇する要因となります。

しかし、量産技術が確立されれば、

製造コストは従来のシリコン太陽電池の

「5分の1」から「3分の1」程度に抑えられる可能性があると見込まれています。

その理由は、主原料の一つであるヨウ素が比較的安価で、

日本は産出国でもあること、シリコンのようなレアメタルを必要としないこと、

そして「印刷技術」のように溶液を塗布して薄膜を形成できるため、

製造プロセスが簡素化され、高温処理や大規模な設備が不要になるためです。

また、材料使用量がシリコン太陽電池の約20分の1で済むことや、

軽量であるため輸送コストや設置コスト(架台が不要な場合も)を

低減できることもコストダウンに繋がります。

経済産業省は、2040年の発電コスト(政策経費を含まない)

目標を15/kWh台半ばと試算しており、将来的には67/kWhになるという試算も出ています。

5・エネルギー変換効率のさらなる向上 ~より多くの電気を作れるか?~

太陽電池の性能を示す重要な指標であるエネルギー変換効率についても、

さらなる向上が求められています。

ペロブスカイト太陽電池の開発当初の変換効率は3%程度でしたが、

その後の急速な研究開発により、近年では実験室レベルで20%を超える高い効率も

報告されるようになり、シリコン太陽電池に迫る勢いを見せています。

しかし、実用化に向けては、実験室レベルの高い効率を実際の製品で安定的に実現すること、

そしてシリコン太陽電池の主流製品(市場では20%超が一般的)

同等以上の効率を大規模生産で達成することが目標となります。

材料組成の最適化、ペロブスカイト層と他の層との界面制御技術の向上、

新しいセル構造の開発など、多角的なアプローチで研究が進められています。

まとめ:課題克服の先に広がるペロブスカイト太陽電池の未来

ペロブスカイト太陽電池は、軽量・薄型・柔軟という特性を活かし、

建物の壁面や窓、曲面、さらにはウェアラブルデバイスなど

従来の太陽電池では設置が難しかった多様な場所での活躍が期待されています。

実用化に向けては、本記事で挙げた

「耐久性・寿命」「含有物質の安全性」「大型化・量産技術」「コスト」「変換効率」

といった5つの主要な課題が存在しますが、

これらの克服に向けて国内外で活発な研究開発が進められています。

日本政府も予算措置や補助金制度を通じて後押ししており、

企業や研究機関も2030~40年の実用化に向けた取り組みを加速させています。

これらの課題を一つひとつ乗り越え、本格的な普及が実現すれば、

ペロブスカイト太陽電池は再生可能エネルギー導入を一層加速させる

ゲームチェンジャーとなる可能性を秘めています。

開発し実用化まではもう少し時間がかかるとおもわれますが、

今後の技術開発の動向から目が離せません。

火力や原子力に頼らない発電技術の今後には期待しかありません。